ドルトムントの新指揮官、「ピーター・ボス」はどんなJリーガーだった!?

2017年06月08日 赤沼圭子

仲間を怒鳴りつける姿は見た覚えがない。

97年、ジェフ入団2年目のボス。34歳の名ボランチは、Jリーグの舞台でいぶし銀の輝きを放っていた。(C)SOCCER DIGEST

 華やかさや派手さはないが、堅実で献身的にチームメイトを助ける。ジェフ市原に在籍していた当時のピーター・ボス(オランダ語での読み仮名はペテル・ボシュ)のプレーぶりは、まさにそういう表現がピッタリだった。
 
 1996年のジェフ加入後のボスは、時折センターバックで起用されたが、基本的にはアンカー、あるいはダブルボランチの一角を担った。シーズンの終盤近くの10月の入団ながら、すぐさまチームにフィット。第27節の浦和レッズ戦のあとには、センターバックの眞中幹夫がこんなふうに試合を振り返りながら、ボスのプレーを高く評価した。
 
「前のラインでボスがワンクッションになってディフェンスの網を作って守ってくれるので、後ろも守りやすくなった。ボスは中盤の守備のキーマンになっている。そのおかげで守備の意識がワンランク上になった。ボールを奪ってからどう攻めるかを考えられるから、苦しい状況でも形が作れた」
 
 同じ試合で左サイドバックを務めた江尻篤彦も、「危ないところをうまく消してくれるというボスの良さが分かった。彼の長所を活かして頑張っていきたい」と話した。
 
 高い危機察知能力を駆使し、的確に相手の攻撃の芽を摘んでは、鋭い読みで中盤の守備を司る。そうしたボスのプレーに感化された選手がいる。99年に高校3年生で2種登録され、そのシーズンのジェフの公式戦全試合に出場した阿部勇樹だ。当時、一緒にプレーしながらボスから多くを学んでいる。チームをピンチから救う守備力を培い、そこを拠り所としながら正確なパスで攻撃の起点となり、時にはボールを持って駆け上がった。
 
 人柄もプレースタイルをそのままに、常に紳士的。はしゃいで大騒ぎしたり、チームメイトを厳しく怒鳴りつけたりする姿は見た覚えがない。Jリーグの登録名は「ピーター・ボス」だが、発音は「ペーター」のほうがより近いようで、チームメイトもスタッフも気さくに「ペーター」と呼んでいた。
 
 確か99年だったと思う。ある日、ボスが髪型を変えた。どうやら思い描いてたものとは違っていたようで、練習の際にチームメイトにからかわれた。だがそうした時にも、怒ったり、きつく言い返したりなどせず、照れくさそうな笑みを浮かべて言い訳めいた話をしていた記憶がある。負け試合のあとでも決して感情を露にせず、落ち着いて冷静に、そして丁寧に取材対応してくれて、記者にとっても優しい選手だった。

次ページジェフを残留へと導き、大きな置き土産を。

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