【松木安太郎】ウイングのポジショニングが流れを変えた。イラク戦でもぜひ、乾貴士を使ってほしいね

2017年06月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

乾は自分のプレーを大事にしていて、とても好印象だった。

乾の気の効いたプレーが攻撃の流れを変えた。写真:田中研治

[キリンチャレンジカップ2017]日本 1-1 シリア/6月7日/東京スタジアム

 シリアは予想以上に強かったね。国内情勢が厳しいなかでも、良いチームを作ってきたなと感心したよ。前半の日本は、なにをやってもうまくいかない雰囲気だった。それはシリアのアグレッシブなプレッシャーを受けて、日本のパスワークが機能しなかったから。具体的に言えば、中盤で数的不利に陥っていたんだ。
 
 この日、先発でウイングを務めたのは、原口と久保。彼らがサイドに張り出している影響で、つなぎに関わる人数が少なかった。だから攻撃が上手く噛み合わなかった。
 
 前半は、守備でもウイングのポジショニングが機能していなかったように見えたね。ハードワークしてライン際を上下動しているんだけど、中央のスペースのケアが不足していた。そこをシリアに使われてワンツーやコンビネーションで攻め込まれていたんだ。
 
 ただ、後半に同点弾を決めてからは流れが変わった。大迫の粘り強いポストプレーが良かったし、長友のボール際の踏ん張りというか、個の力で競り勝ってドリブルで持ち込んだのも素晴らしかった。最終的に決めた今野の決定力もさすがだよ。あのゴールでチーム全体のリズムも変わったね。
 
 加えて、左ウイングに乾が入ってからリズムがだいぶ良くなったのも見逃せない。左サイドでの長友とのコンビネーションもそうだし、中央にタイミング良く入って大迫の近くでプレーする時もあった。
 
 右ウイングで途中出場した本田も同じように、中央に絞ってから外に出ていくプレーをしていた。チームとしてあれができるようになってから、選手の距離感がよくなってボール回しがスムーズになったんだ。
 
 それに、後半は両ウイングが中に絞って守備をしていたのも良かったよ。サイドの選手も含めて細かいポジションチェンジをしていたので、それほど危ないシーンを作られなかったように思う。そういう意味では、ウイングのポジショニング次第で守備の安定感も変わってくるなと感じたね。
 
 試合後にミックスゾーンで乾に話を聞いたら、「監督には上下運動を求められているけど、試合の状況に合わせて工夫してやっていた」というようなことを言っていた。彼の経験やプレーの特長、スペインで得た自信が、そういう判断をさせたんだろう。自分のプレーを大事にしていて、とても好印象だったよ。

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