ACL暴行事件の真相~フェアプレー賞の済州が蛮行に及んだ舞台裏と、羞恥心に苛まれる韓国メディアとファンの本音とは

2017年06月06日 慎武宏

済州・Uの昨シーズンの警告はKリーグでもっとも少なかった。

ACLの浦和対済州・Uで起こった暴行事件は、韓国でも大々的に報じられた。(C)SOCCER DIGEST

 ACLラウンド・オブ16の浦和レッズ対済州ユナイテッド戦の2ndレグ。試合直後に起こった乱闘劇は、韓国でも波紋を呼んでいる。
 
 試合後、済州・Uのチョ・ソンファン監督は「敗者のマナーも必要だが、勝者のマナーも必要だ」と語って浦和が自分たちを刺激したと弁明し、槙野智章を追いかけまわして退場となったクォン・ハンジンも『スポーツ朝鮮』の取材に対して、「槙野と武藤が私たちのベンチの前に来て過激な行動をして挑発したからだ」と、浦和に非があったと主張している。
 
 それどころか、槙野を追走したことについて「日本の選手たちがこちらに来て"槙野が悪かった。申し訳ない。理解してくれ"と言ってきた。その最中にも槙野が指を3つ立てるなどパフォーマンスを続けた。だから追いかけたんだ。自分に非がなければどうして逃げたりするだろうか。槙野を除いてはこれといってトラブルもなかった。(試合は)終わっているのに審判にレッドカードをもらった。不合理だ」とまで言い放っているが、状況がどうであれピッチで蛮行を働いたことには変わりはなく、その行為は責められてしかるべきだろう。
 
 韓国メディアも「済州・浦和"恐怖の鬼ごっこ"一波万波』(『中央日報』)、「済州、浦和との乱闘劇を海外メディアが紹介…国際的な恥」(『SPORTS Q』)、「済州、見苦しい敗北」(『ソウル新聞』)と、今回の暴行劇を問題視している。

 サッカー専門誌『FOOTBALLIST』などは「暴力を加えたのは、済州をマナーでも負けたチームにしてしまう最悪の行動だった。済州の選手の気持ちは理解できるが、挑発よりも"乱入と暴力"がさらに悪い行為だ」と、済州の行動を猛烈に批判している状況だ。
 
 Kリーグを長く取材してきた立場から腑に落ちないのは、なぜ済州・Uがあのような蛮行に走ったのかということだ。
 
 というのも、そもそも済州・Uは、韓国でもフェアプレーに定評があるチームなのだ。昨シーズンに宣告されたイエローカードは41枚で、Kリーグ・クラシック(1部リーグ)の12チーム中、もっとも少なかった。

次ページ日本に対して対抗心を持つファンたちですらも、済州・Uの蛮行を問題視している。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事