【名古屋】"今季最高の前半"が落とし穴――逆転負けの金沢戦で露見した潜在的な問題とは?

2017年06月03日 今井雄一朗

2失点目はチーム全体が前がかりなっていたことを見逃してはいけない。

シモビッチのゴールで先制しながらも、悔しい逆転負けを喫した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 [J2リーグ17節]名古屋2-3金沢/6月3日/豊田ス

 絵に描いたようなアップセットの顛末となった名古屋と金沢の対戦の敗因を、どこに求めるかは難しい。楢崎正剛の軽率なミスが発端と言うこともできれば、酒井隆介のお粗末な対応が、と彼を戦犯にすることもできるだろう。

 しかし和泉竜司が「ミスからの失点はしてはいけないけど、そこをどうこう言っても仕方ない」という言葉のほうが、チームワークとしてはより健全だと思う。ミスはした本人が一番責任を感じているし、覚悟もしている。そもそも、この2-3の逆転負けはやはり、チームがそう仕向けてしまったところがあるからだ。
 
 前半は今季最高と言ってもよいほどに相手とボールをコントロールし、まさに"支配した"という展開に持ち込んだ。だが、好事魔多しとでも言うべき落とし穴は、時間経過とともに徐々にその大きさを拡げていた。
 
 開始2分でGKとの1対1を外した青木亮太しかり、30分の決定機を枠に飛ばせなかった杉森考起しかり、決まり文句と化してきた「最後の精度」がとにかく上がっていかない。前半に放った9本のシュートのうち、ゴールに突き刺さったのはシモビッチのゴールただひとつである。
 
 金沢は4本しかシュートを記録できなかったが、決定機としては4度あり、それ以外の場面と言える楢崎のキックを佐藤洸一がカットする形で、同点に追いついている。和泉は「前半のうちに2-0、3-0にできた試合だった」と唇をかむ。試合開始から裏への放り込みとシンプルなカウンターという戦術を金沢が貫き続けたことを思えば、やはりシュートに持ち込む精度は劣勢の遠因だったと言えるだろう。
 
 嫌な時間に追いつかれ、勝ち越しと勝利を過度に意識した名古屋は後半のプレーバランスを崩してしまい、自らさらなる劣勢を呼び込む。
 
 前半の展開が心に余裕を生んだか、立ち上がりには雑なプレーが散見され、その隙を突かれるようにして失点。2失点目は酒井のクリアミスが直接の原因ではあるものの、チーム全体がかなり前がかりにバランスを傾けていたことを見逃してはいけない。櫛引一紀は「あの場面は僕が残ってしまっていた」と話しており、攻撃から守備への切り替えの意識に、希薄な部分があったのは間違いない。

次ページ次節から上位対決が続く名古屋だけに…。

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