【日本代表】逆境を撥ね返す岡崎慎司。「今季のターニングポイントになった」と語る試合とは?

2017年06月03日 安藤隆人

「イラク戦に勝って少しでもワールドカップに近づきたい」

再び自身の存在価値を示すための戦いに挑む岡崎。6月シリーズの2試合でアピールできるか。写真:徳原隆元

「イラク戦までがシーズンだと思っている」。
 
 岡崎慎司にとってのシーズンは、まだ終わりを告げていない。昨シーズン、プレミアリーグ制覇という世界が驚愕するほどの大きな偉業を成し遂げたレスター。岡崎も『ミラクルレスター』の重要な一員として、充実したシーズンを送った。
 
 しかし、今シーズンは一変し、レスターにとっても岡崎にとっても、いばら道となった。
「こうなることはある程度、予想できていた」と語ったように、チームは苦戦の連続を強いられ、残留争いを演じるようになってしまった。
 
 その中で岡崎はラニエリ前監督の信頼を得られず、出番は減少。自身のコンディションが落ちた訳ではなかったが、完全に指揮官の中の序列は落ちていった。
「何度もスタメンから外されて、また使われて……。それを経験していくなかで、チャンピオンズ・リーグのホームのセビージャ戦が分岐点になった」
 
 今年3月14日のチャンピオンズ・リーグ決勝トーナメント1回戦、セカンドレグのセビージャ戦。ファーストレグではアウェーで1−2で敗れ、岡崎はベンチ入りするも出番はなかった。しかし、その直後に『ミラクルレスター』を生み出したクラウディオ・ラニエリ監督の解任が発表され、クレイグ・シェイクスピア新監督が就任する。
 
「ぶっちゃけると、ラニエリ監督最後のアウェーのセビージャ戦で、自分が最後までFWとして使われなくて、次はスリマニがベンチに入って、僕が外れるなというシナリオができ上がっていたので、自分の中ではもう『あとか2か月どうしようかな』と思っていたのですが、そこでラニエリ監督がたまたま交代になったので、自分の中でのモチベーションが、『もう一度きちんとアピールをすれば、チームにとって大事なピースであることに気付いてもらえる』と思えた。
 
 そしてホームのセビージャ戦でスタメン出場して、今シーズンのベストゲームと言える試合ができて勝利し、1回戦を突破することができた。あの試合でひとつの役割として自分がレスターにハマっているということを辛うじて見せることができた。あの試合がターニングポイントになったと思います」
 
 セカンドレグでシェイクスピア監督にチャンスを与えられた岡崎は、献身的なプレーできっちりと答えた。この試合、岡崎はゴールこそ奪えなかったが、豊富な運動量と前線からのチェイシングでチームに貢献。そして、なにより試合を決定的なものにしたFWオルブライトンの2点目のゴールは、岡崎の強烈なシュートがDFに当たったこぼれの展開から生み出された。
 
 攻守両面で存在感を放った岡崎の活躍もあり、チームは2−0で勝利。ファーストレグの結果を覆し、ベスト8進出を決めた。
 
 この試合を機に、岡崎は再び『レスターに必要な選手』になった。岡崎の目論見通り、自らを重要なピースであるとそのプレーで主張し、それが受け入れられたのだ。そして、今回のロシア・ワールドカップ・アジア最終予選のイラク戦の招集も、岡崎にとっては自身を『日本代表に必要な選手』であることを証明するための重要な機会となっている。
 
 だからこそ、彼は冒頭の言葉を述べたのだ――。
「今は身体をもう一度起こして行って、13日のイラク戦に勝って、少しでもワールドカップに近づきたい」
 
 宣言通りにチームを勝利に導いた時に、ようやく岡崎のシーズンは幕を閉じる。どんな苦境にもチャンスを窺い、それをモノにしてきたように、日本代表でもまだまだ岡崎慎司が必要と知らしめるべく、『侍ストライカー』は、今シーズンの集大成となるイラク戦でも虎視眈々とゴールを狙い続ける。

取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事