【現地発】柴崎岳のスペイン語対応と笑顔に「成長」と「幸福」を見た

2017年05月31日 工藤拓

重要なのはスペイン語の質問にはスペイン語で返そうとする姿勢。

柴崎は10試合目にしてスペイン初ゴール。そのアルコルコン戦ではミックスゾーンで初取材に応じた。写真:佐藤香織

 25歳の誕生日当日という偶然を除けば、5月28日のアルコルコン戦(リーガ・エスパニョーラ2部の40節)で生まれた柴崎岳のテネリフェ初ゴールに驚きはなかった。
 
 10試合目はむしろ遅すぎたくらいだ。「ここ数試合の活躍からして、そろそろ決めるだろう」と思って現地に赴いた身としては、思わずにやけてしまった瞬間でもあった。
 
 しかも試合後には、予想外の一幕にも立ち会うことができた。
 
 移籍後初めてミックスゾーンの囲み取材に応じただけでなく、現地メディアに対して覚えたてのスペイン語で返答を試みる姿まで目の当たりにできたからだ。
 
「Muy contento, me alegro」(満足している、嬉しい)
 
「Nuestra objetivo es, ganamos partido」(僕らの目的は試合に勝つこと)
 
「Sin problema, todo muy contento」(問題ない、全て満足している)
 
 どれも簡単なフレーズで、文法的な間違いもあった。だが重要なのは、スペイン語の質問にはスペイン語で返そうとする姿勢である。
 
 1部のラス・パルマスとの契約が確実視されていた中、急転直下で隣島の2部テネリフェに加入することが決まったのは1月31日のこと。しかしクラブが不安障害と公表するほど体調を崩し、公式戦デビューは3月19日の30節レウス戦まで遅れた。
 
 以降はピッチ上では順調にプレー時間を増やしてきたものの、加入当初の問題を考慮して神経質になっているのか、クラブは柴崎の扱いには慎重な姿勢を貫いてきた。
 
 デビュー戦後に取材に応じなかったのは広報の手違いだったようだが、初先発した2週後の試合後にミックスゾーンではなく、会見場に記者を集めて質疑応答を行なったのはスペインでは異例のことだ。しかも冒頭に広報が「質問内容は今日の試合のことに限る」と釘を刺し、実際にいくつかの質問を断っていた。
 
 それから2か月近くも沈黙を保ってきただけに、今回やっと柴崎が久々に口を開き、それも現地スペインのやり方に合わせようという姿勢まで示したことは、地元テネリフェの人々にとって何よりの朗報となったのではないだろうか。

次ページ試合後には誕生日ケーキが振る舞われて挨拶も。

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