【コラム】テリーが22年間のチェルシー人生に幕引き。「非道な英雄」の今後は?

2017年05月22日 山中忍

サポーターからは何たるかを表現したチャントで送り出される。

最後の最後で優勝カップを手にしたテリー。その姿には多くのチェルシー・ファンが涙したことだろう。 (C) Getty Images

 チェルシーの今シーズン最終節となった5月21日のサンダーランド戦(〇5-1)は、ユース時代を含めて22年間在籍したジョン・テリーにとっても、チェルシーの一員としてスタンフォード・ブリッジで迎えるラストマッチとなった。
 
 先発出場を果たしたテリーは、背番号にちなんだ26分に役目を終えて交代を告げられると、ホームの観衆から「イングランド代表キャプテンは唯一、ひとり!」と盛大な声援で称えられた。これは複数ある讃歌の中でも、最もテリーの何たるかを表わすチャントだと言える。
 
 5年前の代表引退がピッチ上での人種差別発言問題に起因しているように、チェルシーに想いのない人間とってのテリーは、「英雄」と崇められるどころか「非道」とすら責められる存在でもあった。「好きにはなれない」と言う英国人記者もいる。
 
 だが、そうした人々もテリーのリーダーシップだけは認めざるを得なかった。国内では、代表引退後も復帰を望む声が根強く残り、ハリー・レドナップ(現バーミンガム監督)など複数の識者は、リーダー不在が指摘されて久しいアーセナルに今夏の獲得を薦めているほどだ。
 
 テリー自身は優勝セレモニー後のお別れスピーチで、涙を堪えながら「辛い時も、皆をがっかりさせてしまった時も支えてくれたファンに感謝してもしきれない」と語っているが、チェルシーも不屈のリーダーに支えられてきた。
 
 プレミアリーグ史上最高とも評されるCBでもあるテリーは、危険を恐れないタックルで、そして読みの鋭いインターセプトで、幾度もチームを危機から救った。得意のヘディングで値千金の1点をチームにもたらしたことも1度や2度ではない。
 
 そんなテリーのチェルシー最終シーズンは、早々に優勝争いから脱落したライバル勢にリーダーシップの不足が目立った1年でもあった。
 
 マンチェスター・Cとリバプールは、主将のヴァンサン・コンパニとジョーダン・ヘンダーソンが負傷により欠場を余儀なくされた際にチームの精神面が疑問視された。ウェイン・ルーニーにベンチが増えたマンチェスター・Uでは、キャプテンマークを週替わりに異なった選手がつけ、アーセナルに至っては監督のアーセン・ヴェンゲルからして、4月2日のマンチェスターC戦(△2-2)で、ロラン・コシエルニーが交代した後のキャプテンマークの行方を把握していなかった。

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