中田英、闘莉王、本田のような「面倒くさい」男でなければ世界では…ボカの育成年代が示した「デュエル」の手本とは

2017年05月16日 熊崎敬

東京国際ユースに参加したボカの選手は、まったく中学生らしくなかった。

 トルシエなら「フラットスリー」、ジーコなら「自由」、オシムなら「考えて走る」。日本代表の歴代外国人監督には、それぞれ強化指針となるキーワードがある。
 
 現職のハリルホジッチは、もちろん「デュエル」。フランス語で「決闘」を意味する。日本的にいえば「球際の強さ」となるだろう。
 
 昨年11月に行なわれたサッカーダイジェスト誌のインタビューで、指揮官は次のように述べた。
 
「絶対に伸ばさなければいけない要素です。そのためにはトレーニングしかありません。筋力を強化するには頭での理解も大事です。本気でデュエルを向上させる気があるのか。フィジカルとメンタル、両方からアプローチをすべきです」
 
 少し時間が経ってしまったがゴールデンウィーク中、このデュエルの見本となるような試合を見た。
 
 東京国際ユース(U-14)の準決勝、東京都トレセン選抜と対戦したアルゼンチンの名門ボカ・ジュニオルスが、デュエルを前面に押し出したゲームを見せてくれたのだ。
 
 ボカの面々は、序盤から東京都トレセン選抜がボールを持って前を向くたびに一気に間合いを詰め、腰から突き刺さるようなタックルを繰り出した。「ズダーン!」と激しい打撃音が駒沢陸上競技場に響き渡り、直後、東京の選手が苦痛に表情をゆがめて倒れ込む。
 
 こういうシーンが何度か続き、ボカは完全にゲームを掌握した。及び腰になった東京は、自陣から出ることすらままならなくなった。
 
 試合は3-0でボカが快勝。18対2というシュート数が、内容でも圧倒したことを物語る。
 
 ちなみにボカは決勝でFC東京を破り、優勝。スコアは1-1、PK5-4と苦戦したが、こちらもシュート数では14対2と圧倒した。
 
 肉弾戦で敵を委縮させるボカの試合運びは、日本ではなかなか見られないものだ。これは肉体を鍛えれば克服できるというものではないと思う。
 
 荒々しいタックルの他に、ボカには特筆すべきものがあった。それはたたずまい、振る舞いである。
 
 ひと言でいえば、まったく中学生らしくない。堂々としているというより、ふてぶてしく尊大で傲然としているのだ。一生懸命プレーする東京都トレセン選抜とは、とても同じ年頃には見えなかった。

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