【FC東京】“勝つためのプレー”にこだわる髙萩洋次郎。守備の面白さを知り、ピッチの指揮官になる

2017年05月06日 原田大輔

「自分がそこにいるだけで、相手が嫌がることをしたい」

「ひとつポジションが下がったことで、試合の流れが見える」。かつては攻撃的MFでならした髙萩だが、今はボランチで守備を楽しみながら、チームを掌握する。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 試合が進めば進むほどに、時間が過ぎれば過ぎるほどに、確信していった。「あっ、まただ!」「おっ、ここもか!」と、気がつけば感嘆の声をあげていた。
 
 視線の先にいたのは、FC東京の髙萩洋次郎だった。
 
 J1リーグ9節、対広島戦のことである。4−4−2システムの中盤の底、いわゆるボランチを務める髙萩は、常にスペースに顔を出すと、パスを受けてサイドや前線に展開した。
 
 それ以上に筆者が目を見張ったのは、的確なポジショニングが成せる守備だった。
 
 古巣の広島を前に、髙萩はまるで相手の出方を熟知しているかのようにパスコースに現われると、何度も、何度もボールを奪い返した。
 
「広島は戦術が確立しているから、対策された時に、誰が何をすればいいかを考えられないと厳しくなりますよね。自分が(広島で)プレーしていた時にも、"そこ"にいられたら嫌だったので、逆にそれをやっただけです」
 
 試合後、髙萩はそう言って笑ったが、理由は対戦相手が古巣だったからだけではない。Jリーグ復帰初戦となった鹿島との開幕戦でも、負傷前の川崎戦(4節)でも、髙萩は相手の嫌がる位置に現われ、確実に攻撃の芽を摘んでいた。
 
 まるで守備を楽しんでいる。広島戦を見て確信したからこそ、本人にぶつけた。
 
「守備の面白さを感じているところはあるかもしれないですね。つまらない仕事と言えば、つまらない仕事なのかもしれないですけど、それを逆に楽しめるようにやっている。
 
 ボールを奪うところ、コースを切るところは頭を使ってプレーしている。ひとつパスを横に出させるとか、ボールを下げさせるだとか。自分がそこにいるだけで、相手が嫌がることをしたい。今は7割、8割は守備のことを考えてプレーしているかもしれないですね」
 
 広島でプレーしていた頃の髙萩と言えば、2列目だったこともあり、特徴は攻撃にあった。もちろん今も、その才能は随所に見られるが、FC東京で際立っているのは、やはり守備における貢献度だ。
 
「うちは守備がまずは大事。たとえ、攻撃がうまくいかなかったとしても、まずは守備って思っているから、今日の試合(1−0)は大成功ですよね。
 
 1−0で試合を進めて、我慢して戦っていれば、そのうちまたチャンスが来ますから。広島でプレーしていた時ならば納得のいかない試合だったかもしれないけど、FC東京だったら、今日は100点満点です」

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