【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|連戦に撒いた「餌」が最後の45分にもたらした効果

2017年05月02日 渡邉 晋

同じ相手との連戦時の駆け引きはやはり面白い。

勝つことを念頭に準備するのは当たり前。そのうえで、短期間での同じ相手との連戦は様々な駆け引きが面白い。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第8回。テーマは「連戦」だ。4月26日と30日、中3日で清水との連戦をこなした仙台。そんな「なかなかない体験」(渡邉監督)に仕掛けた策とは? 攻守に得た手応えとともに語ってもらった。
 
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[J1リーグ9節]清水 0-3 仙台/4月30日(日)/アイスタ
 
 26日のルヴァンカップ3節と30日のリーグ戦9節、たった5日間で清水と2回も戦った(前者は3-1、後者は3-0でともに勝利)。実はなかなかない体験で、「単純に楽しみたいな」と思った。
 
 もちろん勝負事だから「勝つこと」を念頭に準備をする。それでもメンバー構成や戦い方、相手の出方、その対処法など、短期間に同じ相手と試合をこなすことによる駆け引きはやはり面白い。
 
 前回は2011年だったように記憶している。東日本大震災によってリーグ戦が延期となる試合が続出し、ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)も予選リーグを行なう当初のレギュレーションから、全試合をトーナメント方式とするものに変更された。
 
 カップ戦の1回戦の相手は柏だったのだが、その時に今回と同じことが起こった。7月27日にナビスコカップ1回戦・第2戦で戦い(2-1。2戦合計3-1で仙台が2回戦へ進んだ)、31日にリーグ戦19節で勝敗を争った(0-0で勝点を分け合う結果に)。
 
 さらに遡れば、08年に磐田と競ったJ1・J2入れ替え戦ではないだろうか(第1戦が1-1、第2戦が1-2の通算1分1敗で仙台は6シーズンぶりのJ1復帰とはならなかった)。このクラブにとっては、それほどまでに珍しいことだ。
 
 この2連戦が「相手を研究しやすい戦いだったか」と言えば、「それはお互い様」と言える。「相手がこうくるだろうから、こうやって対策をしよう」という考えに、清水で指揮官を務める(小林)伸二さんも至っていたはず。
 
 特に2試合目となった30日のリーグ戦では、それを随所に感じた。だからこそ、1戦目に用いた策や2戦目の前半に餌を撒いたことが、最後の45分間に効果を発揮したのだとも言える。

次ページリーグ戦の前半は執拗に相手SBの裏を狙った。

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