【横浜FC】痛恨のトラップミスで失点… “経験者”の南雄太が傷心の後輩GKに伝えたいこと

2017年04月16日 松尾祐希

仲間たちは愛を持った「イジり」で気を紛らわせようとした。

今季は開幕戦こそピッチに立ったものの、負傷もあり2節以降は出場なし。それでも南の経験はチームにとって大きな財産だ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 GKという職業は割に合わない商売である。守護神はミスが許されない。どんなにビックセーブを連発しても、敗戦につながる失点を喫してしまえば活躍は水の泡。それが自身のミスに起因するものであればなおさらだ。容赦のないバッシングがサポーターから降り注ぎ、批判の矢面に立たされる。そういう意味で横浜FCの高丘陽平はGK特有の厳しさを味わうことになった。
 
 J2リーグ8節の町田戦で、ゴールマウスに立った高丘は弱冠21歳のGKだ。今季、正GKの南雄太の負傷によって2節からピッチに立ち、好調なチームを最後尾から支えてきた。この試合も前半からまずまずのプレーを披露。56分には決定的なシュートを好セーブで防ぎ、劣勢のチームを鼓舞するパフォーマンスを見せていた。
 
 しかし、0−0で迎えた74分。CB西河翔吾からの何気ないバックパスが高丘を奈落の底に突き落とす。GKにボールを下げる時はセオリーとしてゴールを外した場所に出すが、今回はたまたま枠内に配給された。ただ、周りを見渡しても相手のプレッシャーはない。難なく蹴り返せる状態ではあったが、高丘はゴールエリアで痛恨のトラップミス。自身の足裏を通過したボールはネットに吸い込まれ、結局これが決勝弾となってしまった。
 
 試合後、落ち込みを隠せないまま、サポーターに挨拶を行なった高丘。三浦知良からも頭をポンと叩かれ、気にするなと声を掛けられた。他のチームメイトも言葉を掛け、その励ましはロッカールームに戻ってからも続く。
 
 代わる代わるに仲間たちは愛を持った「イジり」で彼の気を紛らわせようとした。当然、この行動によって高丘の気は多少晴れたかもしれない。しかし、そう簡単にメンタルが回復するわけもなく、身支度を済ませた若き守護神は素早くバスに乗り込んだ。彼が何を想い、何を感じたのか。この経験値が彼の肥やしにならなければ意味はない。つまり、高丘がここからどのように挽回するかが重要なのだ。
 
 そんななか、その光景をベンチから見ていたGKがいる。37歳の南雄太だ。

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