【横浜】男気あるボランチ・喜田拓也。「チームあっての自分」の黒子の美学とは?

2017年04月14日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「仲間がやられれば、思うところもある」

磐田戦では「特別な相手」中村とのマッチアップも。「ひとつ言えるのは、俊さんがいなければ、今の自分は確実にいない」と語る。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ6節]横浜2-1磐田/4月8日/日産ス

 男気のある振る舞いだった。
 
 川又堅碁との接触プレーで松原健がピッチに倒れ込む。痛がる松原の横を素通りしようとした川又だが、喜田拓也に呼び止められると、新潟時代のチームメイトに言葉をかけた。
 
「健くんも痛がっていたので。引き留めたというか、何か言ったらどうなのって」(喜田)
 
 喜田本人は「よくあること」と、あまり興味を示さない話ではあったようだが、しつこく食い下がると、自身の取った行動について教えてくれた。
 
「仲間がやられれば、思うところもある。チームあっての自分なので。助け合いというか、表現の仕方には気を付けながら、そういうのも示せていければ。そんな感じです」
 
 チームあっての自分――喜田の本質が見えてくるフレーズである。
 
「特別な相手」である中村俊輔がいる磐田戦は、いつも以上に気持ちが入っていたのだろう。終盤には珍しく足が攣るほど、攻守に走りまくっていた。「ピッチに立つ選手は、死ぬ気でやらないといけない」と語っていたとおり、その強い想いを体現していた。
 
「この試合に向けて、ベンチだった選手やメンバーに入れなかった選手は、練習でジュビロ対策として本当に一生懸命にやってくれた。自分たちが本番を想定してプレーできる環境を作ってくれた。スタッフもすごい仕事量だと思うけど、苦労とか一切見せず、試合に勝つための準備をしてくれている。僕らは責任感を持ってやらないといけない」
 
 常に自分以外の誰かを思いやりながらプレーしている。チームのために身を粉にして戦う。それが喜田の身上であり、プライドだ。
 
 今季の横浜は、左MFの齋藤学、ボランチの天野純、左SBの金井貢史が形成するトライアングルが大きな武器になっている。彼らが組織として機能するためなら、喜田は黒子に徹するのも厭わない。
 
「状況を見ながら、後ろに残ったり、バランスを取ったりと、自分の役割は多くなるかもしれないけど、それで(2ボランチを組む)純くんがダイナミックに前に出て行くことができればいい」
 
 空いたスペースを埋める、相手を遅らせるようなポジションを取る。それらは地味な作業かもしれないが、チームが上手く回るために、仲間たちが気持ち良くプレーできるように、喜田は「必要なことだと信じて、常に考えながらやっている」。
 
 世代交代が進み、若返りを図る横浜において、22歳のボランチは「自分自身は目立たないかもしれないけど」と控えめだ。ただ本人が思っている以上に、その存在感はますます大きなものになってきている。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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