【コラム】モウリーニョの「ラッシュフォード起用法」は正しい! 色眼鏡を外して見れば――

2017年04月11日 山中忍

代表という色眼鏡を外せば見えてくるモウリーニョの若手起用意識。

母親への親孝行すらも成績不振のせいで叩かれてしまったラッシュフォード(右)。モウリーニョ(左)の下で研鑽を積む19歳の俊英はプロの厳しさを学んでいる真っ最中だ。 (C) Getty Images

「マーカス・ラッシュフォードが母親に200万円台のローレックスをプレゼント」
 
 この行ないが大衆紙で批判的に伝えられたのは4月初めのことだ。マンチェスター・U所属の19歳のストライカーは、今シーズンのプレミアリーグで半年以上ゴールがない状態だったため、若手の「高給取り」を問題視するイングランドらしい孝行息子への非難だった。
 
 同時に監督のジョゼ・モウリーニョもメディアで叩かれた。昨シーズン終盤戦のトップチーム昇格後にいきなり8得点をマークしたラッシュフォードの今シーズンの低調は、出場機会を与えなかった新任監督にも責任があるというものだ。幾多の栄冠に輝いている名将はたしかに「育成」とは無縁の印象が強い。
 
 4月1日のWBA戦(△0-0)後には、モウリーニョが頼りない攻撃陣の1人として名指しで苦言を呈し、「自信を落としている若手には逆効果ではないか?」とも指摘された。母国産FWとしてはウェイン・ルーニー以来の大器と評される逸材が、蕾のまま腐る事態が危惧されている。
 
 だが、イングランド代表カラーの色眼鏡を外せば、モウリーニョのラッシュフォード起用意識がハッキリと見える。
 
 64分から出場した4月9日のサンダーランド戦(〇3-0)は、クラブでの今シーズン40試合目。ピッチ上で過ごした計22時間40分は、10代のプレミアリーガーでは今シーズン最高だ。そのうち22試合は先発してもいる。実際の適切な扱い方は評価されても良いはずだ。
 
 昨シーズンのトップチーム昇格は怪我人続出による偶然で、当人には何のプレッシャーもなかった。ところが、結果的な活躍を受けた今シーズンはより得点を期待されるし、地元出身となればその期待値は倍増する。つまり、「昨シーズンよりも相手ゴールが小さく見えるだろう」とするモウリーニョの懸念も一理あるのだ。
 
 事実、先発出場した10月23日のチェルシー戦(●0-4)では、ビッグゲームの雰囲気に飲まれたかのようにミスも目立った。
 
 その一戦で右アウトサイドを任されたようにCF起用が少ない点も、元イングランド代表FWであるイアン・ライトらOBたちが、ラッシュフォードの現在の環境に不安を抱く一因でもある。
 

次ページイブラは絶対だが、指揮官はラッシュフォードを軽視はしていない。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事