【札幌】新アンカーとして宮澤裕樹が発揮した数字では表わせない凄み

2017年04月10日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

動きはダイナミックで繊細。サッカーIQの高さを証明した。

攻守に渡って抜群の存在感を発揮した宮澤。ゴールもアシストもなかったが、MOMに相応しいプレーを見せた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ・6節]札幌 2-1 FC東京/4月8日(土)/札幌ド
 
 首都クラブに逆転勝ちを収めた試合で、札幌の(采配を振るった四方田修平監督も含め)選手たちの奮闘は凄まじかった。シュート数の差(札幌は20本、FC東京は8本)を机上に載せずとも、「圧倒した」と表現して過言ではないだろう。
 
  42分に同点弾を決めたジュリーニョ、正確無比な左足でCKからお膳立てをした福森晃斗、59分に逆転弾を沈めた都倉賢、ベテランらしい沈着冷静さで歓喜の瞬間をアシストした兵藤慎剛。
 
 それらと比較するのであれば、宮澤裕樹は平凡な記録を残しただけなのかもしれない。ゴールを挙げていない。アシストもつかない。「フルタイム出場、シュート1本、走行距離11.473km、スプリント回数15」というスタッツが目に入るだけ。
 
 だが、これはあくまで数字上の話だ。左膝前十字靭帯断裂、左膝内側半月板損傷、左膝外側半月板損傷という大怪我を負った深井一希に代わって、アンカーに起用された宮澤は、まるで「適性ポジジョンはここだ」と言わんばかりのパフォーマンスを披露した。
 
 恐れずに言いたい。マン・オブ・ザ・マッチは、キャプテンマークを巻いた男だった。10番を背負う男だった。敵の急所を射抜くキラーパスを、ネットを豪快に揺らすシュートを、驚愕する身体能力を、ボールホルダーをなぎ倒すような強烈な寄せを、そのどれも持っていない男が90分のなかで最も輝いていた。
 
 3-5-2の布陣で、中央にドンと構えている。バランスを崩さぬように、気の利いたポジショニングを取り続ける。自身のすぐ前にいるふたり(兵藤、荒野拓馬)と両ウイングバック(田中雄大、早坂良太)と連動してボールを刈る。単独でアタックして奪取する。
 
 攻撃時には、スペースに常に顔を出して最終ラインのパスの受けどころとなった。ボールを持てば相手の寄せに決して屈せず、左右に散らし、縦に通した。リズムを作り、味方が気持ち良くプレーできるような配慮も忘れない。
 
 もちろん、細かなミスは散見された。それは、「重箱の隅をつつくような」指摘でしかない。立ち姿は頼もしく、動きはダイナミックであり、また繊細だった。判断力に優れ、サッカーIQの高さを証明した。

次ページ「しっかりと守備ブロックを構築して攻撃に移れた」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事