【現地発】痛恨ミスのドンナルンマ…それでも「ブッフォンの後継者」たりうる理由とは?

2017年04月04日 片野道郎

まさに「パペラ」だった12分のオウンゴール。

ペスカーラ戦で致命的なミスを犯したドンナルンマ。しかし、しっかり切り替えてその後は冷静なセーブを見せた。写真:Alberto LINGRIA

 4月2日のセリエA30節、アウェーのペスカーラ戦で1-1の引き分けに終わったミラン。ここまで実質1勝(もう1勝は不戦勝)の最下位チームが相手で勝点3が計算できる試合だったこと、ヨーロッパリーグ(EL)出場権(4、5位)を争うラツィオとアタランタが揃って勝利を収め、ELゾーンまで4ポイント差に開いてしまったことを考えると、非常に痛い取りこぼしである。
 
 勝てる試合を取りこぼした直接の原因は、前半12分という早い時間帯に与えた信じられないオウンゴールだった。自陣右サイドで敵のハイプレスを受けて窮地に陥ったCBガブリエル・パレッタが苦し紛れに戻した強いバックパスを、左足で止めようとしたGKジャンルイジ・ドンナルンマがまさかのトラップミス。ボールはその左足にかすりもせず、そのままミラン・ゴールに飛び込んだ。
 
 失点に繋がるようなGKの大きなミスを、イタリアでは「パペラ(あひる)」と呼ぶ。これは100年以上も前のイタリア代表GKがミスから失点した時、当時の代表監督が「あいつはあひるみたいに不格好だった」とコメントしたのが起源。今回のドンナルンマのミスも、典型的な「パペラ」だった。
 
 バックパスをする場合には、GKがミスをしてもオウンゴールに繋がらないようにゴールの枠を外したところに送るのがセオリーだ。その意味でこの失点は、ゴールに向かって、しかも強いパスを送ったパレッタの責任も小さくない。ドンナルンマがボールに触らなかったため、記録上はパレッタのオウンゴールになってもいる。
 
 しかしもちろん、最も大きな責任が簡単なトラップを空振りするという「パペラ」を演じたドンナルンマにあることは明らかだ。
 
 勝利が義務づけられた試合で開始早々にゴールをプレゼントするというこのアクシデントが、セリエAにデビューしてまだ2年目で18歳になったばかりのGKにどれだけのショックをもたらしえるかは、容易に想像がつく。

次ページGKにもっとも必要な能力はミスを「リセット」すること。

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