FC東京サポーターの前で号泣…。権田が“その心情”を激白

2017年04月02日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「ちゃんと謝らないといけないと思っていた」

ミスで失点を喫した権田。「勝てなくて申し訳なかった」。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

【J1リーグ5節】FC東京 3-3 鳥栖/4月1日/味スタ
 
 試合前、権田を待っていたのは手荒い歓迎だった。鳥栖のメンバー発表で「権田修一」の名前がアナウンスされると、FC東京のサポーター席から特大のブーイングが飛び出したのだ。
 
 FC東京育ちの権田は16年1月にSVホルンに期限付き移籍。しかし、レンタル終了後にFC東京に復帰せず、ヨーロッパでのプレーを望んでクラブとの契約を解除した。それなのに数か月に新天地が鳥栖に決まったのだから、「裏切者」と見なされても仕方なかった。
 
「そりゃあ、人間なんでね、こういう形で移籍をすると、いろんな思いの人がいる。当然、ブーイングしたい人もいるわけで。でも、僕が決めた人生ですから、それを進むしかない。後悔はしていないし、とにかく今から前に進むしかないと思って鳥栖に移籍しました」
 
 ただ、そんな権田も、古巣対決、しかも、かつてのホームスタジアムでの試合で、平常心は保てなかった。自らのファンブルで失点するなどミスを連発。チームに多大なる迷惑をかけてしまった。
 
「勝てる試合だったので、責任は感じています。動じないつもりだったのですが、まだまだだなと。GKは常に冷静じゃなきゃいけないけど、今日はそうじゃない自分がいた。

人生で一番辛いというか、不思議な……。味スタで試合をできるのは嬉しい半面、ユニホームはFC東京じゃないし、今は鳥栖のためにやらないといけないし。そこは複雑でしたけど、僕は鳥栖の一員としてFC東京に勝つことが恩返しだと思っていた。でも、それもできなかったので残念です」
 
 それでも、権田は決めていた。試合後に必ず、FC東京のファン・サポーターに挨拶をする、と。
 
「どれだけブーイングされようが、挨拶に行くというのは決めていました。マッシモ(フィッカデンティ監督)にも言っておいたので。それこそ、鳥栖に入ったすぐぐらいの時に。けじめじゃないですけど、僕はこのスタジアムで育ち、このスタジアムで嬉しい思いも、悔しい思いもいっぱいしてきた。
 
 僕が試合でどんなミスをしても、いつも支えてくれたのがゴール裏から名前を呼んでくれたファン・サポーターの方々だった。僕がFC東京のサポーターだったら、『ふざけるな』と思う。こんな移籍の仕方があるのかって。だから、ちゃんと謝らないといけないと思っていた」
 
 試合後、FC東京のスタンドに歩み寄った権田は号泣したままその場に座り込む。そして、手と手を合わせた。こうした形で今までの感謝の意を示すことが、権田なりのけじめだったのかもしれない。
 
 来シーズン、仮に権田が鳥栖の一員だったとして、再び味スタで戦うことになれば──。メンバー発表で「権田修一」の名前がアナウンスされた時、スタジアムは大きな拍手に包まれるはずだ。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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