【タイ戦|戦評】ハリル采配に疑問。なぜ“臆病に映ったCB”を交代させなかったのか

2017年03月29日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

タイ戦に“今野の役割”を担う選手は見当たらなかった。

連勝というノルマは果たしたハリルホジッチ監督だが……。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[W杯アジア最終予選7節]日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉
 
 無失点で終われたのが不思議な試合だった。前半終了間際の大ピンチ、85分のPKと、2ゴールは失ってもおかしくなかった。いずれもGK川島のスーパーセーブで凌いだものの、なんとも後味の悪い大勝だった。
 
 もっとも、3月の連戦で求められていたのはなにより結果であり、その点でハリルホジッチ監督は素晴らしい仕事をした。負傷者続出というアクシデントに見舞われながらも敵地でUAE、ホームでタイを下した功績は称えられて然るべきだろう。
 
 ただし、グループBの首位に立ったとはいえ、2位のサウジアラビアと同勝点、3位のオーストラリアとは勝点3差と団子状態(最終予選は残り3試合)。この2か国との対戦を残す日本の、ワールドカップ出場への本当の戦いはむしろこれからと考えると、タイ戦のようなパフォーマンスでは不安を覚えてしまう。
 
 とりわけ気になったのが、2-0とリードした19分以降の試合運びだ。ホームで、しかも2点差。決して焦らなくてもいい状況なのに、縦に急ぐ攻めが目に付いた。それが意図のある攻撃ならまだしも、ビルドアップの局面でのスムーズな連係は数える程度。むしろ中途半端な位置でボールを奪われ、カウンターを食らったという印象のほうが強かった。
 
 ビルドアップが上手くいかなかった事実は以下の証言からも分かる。
 
「もうちょっとテンポよくつなぐべきだった。くさびを無理に入れたせいで、守備でリスクを負う格好になってしまった」(吉田)
 
「自分で持ち上がりながらパスの出しどころを探す時間帯が多かった」(森重)
 
「結構走っていましたけど、ボールが出てこなかった」(原口)
 
 タイ戦の2ボランチが山口、酒井高という急造コンビだった影響もあるだろうが、いずれにしても中盤でボールを落ち着かせる選手がこの日はいなかった。先のUAE戦では、1-0とリードした後、今野が上手くスピードダウンさせる役割を担っていた。具体的には、相手からプレッシャーをかけられなければその場でストップし、あえてボールを動かさずに抜群のタメを作っていたのだ。
 
 敵が詰めてこないシチュエーションで、こっちからドリブルで仕掛ける必要はない。その意味で今野の振る舞いはインテリジェンスに溢れていた。その今野を欠いたタイ戦はどこかメリハリがなく、久保の個人技で崩したと言っても過言ではない。この日、3ゴールに絡んだ彼の活躍がなければ、日本は危なかったかもしれない。
 
 攻撃面では、大迫の不在も大きく響いた。UAE戦は「大迫に預けておけば大丈夫」という共通認識が窺えたが、このストライカーが足の負傷で欠場したタイ戦ではCFで先発した岡崎がターゲットマンになりきれていなかった。特に、岡崎、香川、原口のトライアングルがあまり機能しなかったことで、UAE戦より攻撃のスピード、迫力を欠いた感があった。

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