【G大阪×浦和】藤ヶ谷の負傷退場、田尻の涙——GKを巡るドラマ

2017年03月30日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

藤ヶ谷は「情けない」という言葉を繰り返した。

ようやく戦列復帰を果たした藤ヶ谷だが、今度はふくらはぎを傷めて交代に……。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 G大阪対浦和戦は、必ず"何か"が起きるカード、と言っていいかもしれない。3月19日の市立吹田スタジアムでの一戦、ほぼ観客席を埋めたサポーターを騒然とさせ、同時に胸を熱くさせたのが、36歳になった大ベテランの藤ヶ谷陽介、そしてプロ6年目ながらまだリーグ戦未出場だった23歳の田尻健――。ふたりのGKを巡るドラマだった。
 
 日本代表にも選出される正GKの東口順昭が11日の3節・FC東京戦で、PKのこぼれ球に詰めた大久保嘉人との接触プレーで左頬を骨折し、戦線離脱に……。その直後に行なわれたACLの江蘇戦(0-1で敗れる)では、今季加入した鈴木椋大が"新天地デビュー"を果たした。
 
 そして、この浦和戦では、1月に負った右腓腹筋肉離れから戦列復帰した藤ヶ谷が、今季初めて公式戦のピッチに立った。
 
 前半から浦和に押し込まれる劣勢のなか、藤ヶ谷は38分に森脇の鋭いシュートをキャッチ。さらに幾度となく危ない場面で身体を張り、コースを防ぎ、ギリギリのところでゴールを許さない。そして57分、今野の待望の先制ゴールが決まった。
 
 しかし——その後も宇賀神のシュートを止めるなど猛攻に耐えていた背番号1が、63分、ピッチに膝をつく。一旦は立ち上がってプレーは再開したが、再びふくらはぎの裏を押さえて、倒れ込んでしまう。ヒラメ筋が肉離れを起こしたのだ。
 
「情けないですね……。怪我で交代だなんて。チームに迷惑をかけてしまいました」(藤ヶ谷)
 
 チームドクターと藤ヶ谷がプレー続行は不可能だと判断。背番号18は担架でピッチ外へ運び出される。そして72分、ベンチにいた田尻がまさにスクランブルで送り出された。
 
 試合後、藤ヶ谷は無念そうに振り返る。
 
「『あれおかしいな』と思ったら、左ふくらはぎがぴきっと来た。そこから100パーセントでは走れなくなってしまった。肉離れかなと思い、ドクターと相談して、交代を決めました。久々の実戦で、上手く試合に入ることができました。それだけに……情けないですね」
 
 藤ヶ谷は「情けない」という言葉を繰り返した。​​

 一方、交代出場した田尻にとっては、まさかの形で"J1デビュー"の機会が巡ってきた。
 

次ページ6年目の田尻に突然訪れたJ1デビュー。最後はサポーターの声援に涙を浮かべた。

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