【高校サッカー】日本一の重圧に苦しむ青森山田に変化の兆し。新10番、郷家友太から消えた迷いの表情

2017年03月19日 川端暁彦

プーマカップでは孤軍奮闘する郷家の姿があったが…。

昨季の選手権では2年生ながら抜群の存在感を見せた郷家。今季は千葉に加入した高橋の後を継ぎ10番を背負う。写真:川端暁彦

 青森山田高の新10番、郷家友太の新シーズンは必ずしも順風満帆ではない。悩みもあれば、違いもある。何より新チーム自体が、早くも大きな試練の中だ。昨季は高校サッカー選手権と高円宮杯の二冠を達成し、「あの青森山田」という視線にさらされる中で、北の大地で静かに成長してきたタレントは、越えるべき壁の前に立っている。
 
 先の選手権において、郷家は伸び伸びと自分を表現し続けていた。傑出した"10番"高橋壱晟、最強のキャプテン・住永翔と中盤中央に攻守万能のトライアングルを形成。必殺の武器になったロングスローで脅威となりつつ、機を見てゴール前に進出し、あるいは中盤で起点となって相手チームを苦しめ続けた。セカンドボールへの反応速度も特筆モノで、大会後からU-18日本代表のスペイン遠征へ抜擢されたのも納得のプレーぶりだった。
 
 だが、チャンピオンチームとして臨む新シーズンにかかるプレッシャーは外野が想像する以上のものがある。たった二人のレギュラーの内の一人である郷家は「自分には新チームを引っ張る責任がある」と語っていたが、彼らと新しくトップチームに加わった選手の間には、レベルや意識にギャップがあったのは否めない。
 
 東北高校サッカー新人大会では、欲しい位置に出てこないボール、返ってこないリターンパスに対して、グッと言葉を飲み込むような様子を見せることもあった。「難しいです」。高橋や住永と組んだ日本一の中盤で培ったイメージとのギャップの中で、郷家自身のプレーも精彩を欠いた。
 
 3月初週の群馬県で行なわれたプーマカップにおいても、青森山田の歯車は噛み合わなかった。郷家はアンビリーバブルなオーバーヘッドキックを決めてみせるなど能力の高さ、センスの良さを随所に見せていたものの、チームの結果は振るわない。試合会場となった前橋育英高のグラウンドに、青森山田コーチ陣の厳しい叱責の声が響き続けた。ここまでの流れは、ひたすら厳しいシーズンを予感させるものだった。

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