【甲府】吉田新体制の大まかな設計図は見えた。しかし、課題は「富士山級」に山積みだ  

2017年03月06日 大島和人

ウイルソンがボールを運んだ「その次」の精度や連係には課題がある。

パスをつなぐスタイルを表現する意図は伝わったが、連係の熟成には時間が必要だ。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 甲府はJ1・2節の鹿島戦を0-1で終えた。ウイルソンが90+4分のPKを成功していれば勝点1は獲れたわけで、最下位候補が王者に善戦したという評価もあるだろう。シュート数は2本に止まったが、4つのCKを含めてセットプレーの見せ場はあった。チームとして意図する「形」は作れていた。
 
 吉田達磨新監督は「僕たちがアントラーズを相手にそんな沢山のシュートを打てるとは思っていない。失点するまではスペースを見つけて走って、奪って前に出してというところを出せていた」と展開を振り返る。甲府は監督が変わっても、J1にいる限りはボールを「持たれる」ことが試合運びの前提となる。攻撃では当然、カウンターが最大の狙いだ。
 
 新加入のFWウイルソンはボールを「運ぶ」ところに強みがある。鹿島戦後も「もう少しゴール前で耐えるべきだったのではないか?」という質問に対して、彼はこう答えていた。「自分のボールをもらう動きもすごく良かった。ボールを迎えに行くスタイルだし、相手が食いつけばスペースが生まれると思った」(ウイルソン)。
 
 ウイルソンと2トップを組んでいた堀米勇輝もこう振り返る。「良い縦関係とかで前半は何本かチャンスを作れていた。そこをもう少し突き詰めていきたい」。
 
 一方でウイルソンがボールを運んだ「その次」の精度や連係には課題がある。個の能力についてはもう永遠の課題だが、数週間、数か月で修正可能な部分もある。
 
 キャプテンの山本英臣はこう説く。「行けるならそのまま行けばいいし、行けないのであれば攻撃をやり直すというところも必要だけど、(味方が)セカンドボールを拾える位置を取れれば攻撃の選手ももっと仕掛けられる」。
 
 確かに甲府の攻撃は単発で終わってしまうことが多かった。それを二次攻撃、三次攻撃につなげるためにはセカンドボールを取らなければならない。個の判断に加えて、全体が連動して押し上げるオーガナイズも必要になるだろう。
 
 加えて甲府にとって数年来の課題が「失点後の落ち込み」だ。吉田監督は「身体がボールに反応していなかった。ボールを欲しがらなくなったところがあった。それではいけない」と表情を曇らせる。新加入の兵働昭弘、小椋祥平も首をひねる。

次ページ失点後の30分間をキャプテン山本も悔いる。

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