【蹴球日本を考える】極寒の大阪でマレーシアの人々とガンバ戦を観戦して感じたこと

2017年02月08日 熊崎敬

彼らはイスラム法で許された「ハラル食品」しか口にできない。

マレーシア王者のJDTはG大阪に完敗。しかし、スタンドでは熱い応援が繰り広げられていた。写真:川本 学

 今シーズン初の公式戦、ガンバ大阪とマレーシア王者ジョホール・ダルル・タクジム(以下JDT)のACLプレーオフの試合を観戦しようと、吹田スタジアムに足を運んだ。
 
 観戦の目的は、G大阪の仕上がりを確認するためではない。
 
 2年前、旅の途中でジョホールバルに立ち寄った僕は、日本がワールドカップ初出場を決めた伝説のスタジアム「ラルキン」で、JDT最大のサポーターズグループ「海峡ボーイズ」のハクさんと知り合った。そのハクさんがJDTを応援するため、初来日するという。向こうでお世話になった身としては、これは行くしかない。
 
 キックオフは午後7時だというのに、3時ごろにはすでに30人ものJDTサポーターが万博記念公園に集結していた。
 
 これは驚きだった。JDTは予選2回戦からの参加。1月31日、格上タイのバンコク・ユナイテッドをPK戦の末に破り、大阪行きを決めた。つまりハクさんを含めたサポーターたちは、この1週間で仕事や学業、渡航費の都合をつけて、物価の高い日本に乗り込んできたのだ。建設会社に勤めるハクさんも、懸命に仕事を片付け、上司の許可を得て3日間の休みを取ったという。
 
 JDTのサポーターのほとんどはイスラム教徒。そのため、食事についてはイスラム法で許された「ハラル食品」しか口にできない。
 
 そのあたり、ハラルの少ない日本でどうしているのか尋ねると、敬虔なイスラム教徒は、自国からパンや麺類などの食品を持ち込んでいるようだった。僕も親切な一家にビーフレンゴという肉料理をご馳走になったが、これがなかなか旨かった。
 
 一方、ハクさんたち「海峡ボーイズ」の面々は準備がよく、日本人の知り合いからハラルが食べられるレストランの情報を取り寄せていた。そこで天丼を食べ、スタジアムにやって来たそうだ。
 
 時間が経つにつれて、スタジアムには続々とJDTサポーターが集まってきた。このJDTサポーターの特徴は、とにかく感じがいいということに尽きる。
 
 大声で騒いだりせず、日本人と目が会うたびに笑顔で挨拶する。ゴミが出てもポイ捨てせず、ゴミ箱を探して捨てに行く。道端だから勝手に吸えばいいのに、わざわざ「タバコ喫ってもいいですか」と訊いてくる。
 ワールドカップが開催されるたびに、日本人のマナーの良さが話題になるが、マレーシア人も素晴らしい。
 

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