【広島】新加入の工藤壮人に、P・ウタカの代役は務まるのか?

2017年01月29日 中野和也

工藤の才能は、P・ウタカというよりも佐藤寿人を彷彿とさせる。

対外試合で早くもゴールを奪った工藤。期待は高まっている。写真:中野香代(紫熊倶楽部)

 キャンプのスタートから突出した切れを見せつける柏好文から、フワリとしたクロスが上がった。ストライカーはフリーになった。ヘッド! 決めたのは工藤壮人。広島移籍後初の対外試合ゴールだ。
 
 相手がJ3のチーム(鹿児島ユナイテッド)とはいえ、そう簡単にゴール前でフリーになれるものではない。事実、その後は鹿児島のタイトな守備の前に広島はリズムが作れなくなった。強烈な推進力と相手を剥がす迫力を見せつけた青山敏弘やフェリペ・シウバがピッチに登場するまで、広島はシュートすらまともに打てない。だからこそ、わずかなチャンスを決めて見せた工藤の能力が光る。
 
 昨年、広島の攻撃を牽引したピーター・ウタカとの契約は、残念ながら暗礁に乗り上げたままだ。タイ、そして宮崎と続くキャンプに参加する目処も立たず、昨年の得点王が広島でプレーする確率は低いと言わざるをえない。圧倒的な肉体と美しい技術を持ったスーパースターが紫のシャツを脱ぐことは、言うまでもなく大きな損失である。
 
 では、誰がP・ウタカの代わりを務めるのだろう。否、誰も「代役」はできない。突出した創造性を駆使して相手の度肝を抜き、最後には決めてしまう。ドリブル、スルーパス、ゴールゲット。19得点・8アシストを記録しふたP・ウタカは、攻撃面ではまさに万能。そんな選手がそうそう転がっているわけがない。フェリペ・シウバにはそういう「万能性」を感じるが、得点を量産したP・ウタカと違い、彼はむしろチャンスメーカーの色が濃い。
 
 もちろん、工藤にしても「ウタカの仕事」をすべて担うことはできない。柏時代には2列目を任されたこともあるが、彼の本質はやはりストライカーだ。鹿児島戦で見せたようなDFを欺くポジション取りの妙は、点取り屋の才能そのもの。P・ウタカというよりもむしろ、広島のエースの座に12年間も君臨した佐藤寿人(名古屋)を彷彿とさせるクオリティ。P・ウタカとは「技術」のジャンルが違うのだ。

次ページ「奪われたら奪い返す」サッカーのキーマンとして期待されているのが工藤である。

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