かつての国見を彷彿させた小嶺サッカー。名伯楽が現場復帰で見せたかったものとは?

2017年01月12日 安藤隆人

『下手でも戦える』ということを見せたいと思った。

一昨年の9月から長崎総科大附の指揮を執る小嶺監督。「長崎のレベルをもう一度上げたい」と意気込んでいる。写真:写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 小嶺サッカーの復活――。
 
 青森山田の優勝で閉幕した今回の高校サッカー選手権で、2回戦で敗退したものの、長崎総科大附のサッカーからは、そんな印象を確かに受けた。
 
 かつて島原商、国見を選手権優勝に導いた高校サッカー界の名将・小嶺忠敏氏が2007年11月に同校サッカー部総監督に就任してから、メキメキと力をつけて来た長崎の新興勢力は、一昨年に大きな転機が訪れた。
 
「長崎のサッカーのレベルをもう一度上げたい。『下手でも戦える』ということを見せたいと思いましたし、周りからもそういう声が多かった。ずっと今まではアドバイスする程度だったのですが、ここでもう一度、最前線でやってみようと思ったのがきっかけです」
 
 2015年9月に小嶺氏が総監督から監督に就任。その年の選手権予選で敗れ、新チームのスタートが早まると、小嶺監督はチームに徹底して勝者のメンタリティを植え付けた。
「今年のチームは最後まで集中してやらないと勝てない。下手は下手なりに、チームとして戦う」(小嶺監督)
 
 新チームの最大の武器は、宇高魁人、安藤瑞季、右田翔の3トップと、トップ下の薬真寺孝弥の4枚のアタッカー。スピード、フィジカル、シュートセンスに秀でた彼らが、フレキシブルに動いて、多彩な崩しからゴールを陥れる。
 
 この4枚のタレントを最大限に生かすためには、ボランチを含む後方の選手たちの成長が不可欠だった。そのため小嶺監督は守備の立て直しを行ない、ボールを奪ってからの素早い攻守の切り替えなど、爆発力を持つ攻撃陣と、堅実な守備陣が組織として噛み合うように、丁寧にチームを作り上げていった。
 
 その結果、2016年に長崎総科大附は九州で猛威を振るった。プリンスリーグ九州では試合を重ねるごとに攻守ががっちりと噛み合い、終わってみれば16勝2分けの無敗優勝。総得点66、総失点16と圧倒的な力を見せつけた。
 
 そして、2年ぶりの出場となった今回の選手権。初戦の相手はJリーグ内定選手2人を擁する桐光学園だ。この試合で長崎総科大附は小嶺監督の教えをプレーで表現してみせたのだ。
 

次ページ桐光学園戦で見せたのはまさしく、かつての国見のサッカー。

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