【選手権】夏の全国優勝時はベンチ外。急成長遂げた市船2年生守護神は名誉の無失点敗退にも「勝たせるGKになる」

2017年01月11日 松尾祐希

GK育成に定評のある市立船橋にまたも楽しみな逸材が現わる。

市立船橋の守護神・長谷川。レギュラーの座を掴んだのは優勝した夏のインターハイ終了後で、現在急成長を遂げている。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 GKの育成に定評がある名門・市立船橋に、またまた楽しみな逸材が現われた。それは2年生守護神・長谷川凌だ。
  
「プレッシャーのあるほうが活躍するタイプ」という男に、初の選手権という重圧は関係なかった。超満員となったフクアリのピッチで動じず、1回戦の京都橘戦では189センチという体躯と抜群の運動能力を生かして好セーブを連発。昨年U-19日本代表・岩崎悠人(3年)が放った強烈なFKも横っ飛びで弾き出した。
 
「あいつは当たるんですよ(笑)」と朝岡隆蔵監督も舌を巻くセービング力が、来季から京都でプレーする男に通用したのは間違いない。続く2回戦の前橋育英戦でも長谷川は奮戦。PK戦で涙を飲んだが、彼がいなければ80分で決着していてもおかしくなかった。
 
 今大会で一気に名を上げた長谷川。夏までは1年時からトップチームに帯同する井岡海都(3年)、抜群の身体能力を誇る北畠新輝(3年)の牙城を崩せず、チームが今夏のインターハイで全国優勝した時はメンバー外だった。
 
 しかし夏場以降、メンタル面と技術面で変化が見られると、9月下旬に行なわれたプレミアリーグEAST・14節のFC東京U-18戦で先発に抜擢。積み上げてきたプレーを存分に発揮すると、その後もレギュラーの座に君臨。3年生GKとのポジション争いを制し、選手権で飛躍するきっかけを自らの手で掴んだ。
 
 初の檜舞台は、2試合を戦い無失点、最後はPK負けという形で幕を閉じた。「活躍はできたと思うけど、負けてしまったら意味はない。チームに貢献して勝たせるGKにならないといけないと、この敗戦で思いました」と長谷川。彼が培った選手権での経験を生かさなければならない。
 
「頼られるようになりたい。あとは当たり前のことを当たり前にできるようにしたい。最後まで諦めないこととかも練習からできていなかったから、最後の試合に出てしまったのかもしれない。日頃の行ないをもう少し変えていきたいと思う」(長谷川)
 
 すでに長谷川は来年に目を向けている。「身長を生かしたハイボールの強さと、あとはボールにぶつかりにいくところが武器。1対1で向かっていくのが好きなので、そこは生かしていきたい」という武器は十分に通用した。それだけに今後は、キックなどの技術を磨くことが飛躍のカギとなる。
 
「190センチ近くあるけど、身長はまだ伸びている。絶対にプロに入らないといけない選手」(伊藤竜一GKコーチ)。志村滉(磐田)などを育てた名伯楽からも、大きな期待を寄せられている逸材はさらなる成長を誓う。レベルアップに成功した暁には、今年発足予定のU-18日本代表入りも十分に可能性があるだろう。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)

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