【選手権】青森山田FW鳴海、スポーツ一家で育まれた身体能力を武器に優勝&得点王狙う

2017年01月08日 川端暁彦

不発の準決勝後は指揮官と話し合い、初心に返って決勝へ。

今大会ここまで4得点の青森山田FWの鳴海(11番)。決勝ではチームを優勝に導くゴールを挙げられるか。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 青森山田のFW鳴海彰人は不思議な魅力を持った選手だ。エースストライカーであり、夏のインターハイでは得点王も獲っている今年の看板選手の一人なのだが、気取ったところはまるでなく、自然体で振る舞い、自然体で戦える。黒田剛監督も何かあるごとに「まあ、ああいうやつなのでね」と笑って見守ってきた"愛されキャラ"でもある。
 
 跳躍力に秀で、チーム一の俊足で、ボディバランスも抜群にいいという個性溢れるストライカーは、北海道新ひだか町の出身。その父は「今も走るとすごく速い」(鳴海)元陸上選手で、母もまたスポーツ万能。陸上、バスケ、バレーボールに励んだ選手だったと言う。その血を受け継いだ5人兄弟(兄2人、姉1人、弟1人)はいずれもサッカーの道を選んだ。
 
 姉・若菜はJFAアカデミー福島で活躍し、現在はノルディーア北海道(チャレンジリーグ)でプレーしている選手である。いまも弟の試合を観に行くと、「必ず試合後にLINEで『ここは良かったけれど、あそこはダメだった』とアドバイスをしてくれる」(鳴海)仲だそうだ。
 
 夏冬得点王を目指していた今大会はここまで4得点だが、準決勝では不発に終わり、準々決勝の出来を含めて黒田剛監督は「得点王を意識し過ぎていたのではないか。真ん中で待つばかりで動きが足りなかった」と渋い顔。
 
 準決勝後には鳴海を呼び出して二人で話し合ったという。「献身的に戦えるのがアイツのいいところだから」(黒田監督)と諭し、それを続けることが得点に繋がるのだと説いて聞かせた。本人も決してエゴイスティックな選手ではないだけに、「話せば分かる」(黒田監督)。もう一度初心に返って納得した上で、決勝戦に臨むこととなる。
 
 北海道の大地が育んだ自然体のストライカーの趣味は「釣り」。得点王という魚に釣られかけてしまった心を戒め、まずは優勝という大魚を狙うことに集中する。チームのために戦う姿勢を貫いた時、自然ともう一匹の魚も釣れる可能性も大いにあることだろう。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)
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