【選手権】米子北をプレミア昇格に導いた新人監督は“最後のロッカールーム”で何を語ったか

2017年01月03日 森田将義

「“パパみたいな存在”と言う選手も多い」

今季はプリンスリーグ中国を制し、来季のプレミア昇格も決めた米子北。快進撃はついに終焉を迎えた。写真:浦 正弘

[選手権2回戦]米子北 0-1 佐野日大/2017年1月1日/味フィ西
 
 日本代表DF昌子源(鹿島)を擁した2009年にはインターハイで準優勝。米子北を全国で戦えるチームへと育ててきた城市徳之監督が今年から総監督に就任した。後任を託されたのは長きに渡って、コーチを務めてきた中村真吾監督。新体制となったが、今季も城市総監督と共にベンチに入るなど大きな変化は見られず、中村監督は「監督1年目という意識はなくて、城市先生がやってきた18年間の続きだと思っていて、コーチ時代と変わらない気持ちでいる」と話す。
 
 戦い方も、これまで同様のパワフルサッカーを受け継いでいる。自陣でボールを奪ったら素早く前線にロングボールを展開。前線の選手が競り合ったセカンドボールを2列目が拾って、フィニッシュまで持ち込む。この日の試合でも伝統のスタイルを徹底し、佐野日大のシュートが3本に対し、米子北は10本のシュートを放った。
 
 試合展開や公式記録を見れば米子北が終始、押し込んだように見えるかもしれないが、佐野日大に"あえて攻めさせられていた"だけに過ぎず、立ち上がりからずっと「相手のペース」(中村監督)。後半に入ってからは、積極的に交代のカードを切り、システムを変えながら、佐野日大の壁を崩しにかかったがゴールネットを揺らすことができない。悲劇が訪れたのは3人目の交代選手を入れた直後の62分。守備の連係ミスからオウンゴールを許し、0-1で敗れてしまった。
 
 冒頭の言葉のように監督としてよりも、コーチの色が強く見られる就任1年目だったが、監督としての後悔も残る。今年の3年生は、入学当初から中村監督が指導を行ってきた世代とあり、これまでの世代以上に想い入れは強い。選手も想いは一緒で、「学んだことが色々ありすぎてすぐには出てこない。厳しいことも言われたけど、身体のことを気遣ってくれたり優しい部分もたくさんある。"パパみたいな存在"と言う選手も多い」(GK中原創太)。
 
特に、中村監督の選手に対する想いが感じられたのは試合後の取材時。記者に囲まれた当初は気丈に試合内容を振り返ってきたが、3年生の話題になると、「1年生の頃からダメだと言われてきた学年なので、なんとか結果を残させてあげたいと思っていた。上手い、下手ではなくて、他人のために何かができない学年だったから、ひとつになればこんな良いことがあるんだよということを伝えるためにも勝たせてあげたかった。そうできず悔しい」と涙を堪えきれなくなった。

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