【選手権】Jスカウト陣を唸らせた2年生対決、生駒vs安藤の壮絶

2017年01月02日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

後半、安藤が天性の嗅覚を働かせた。

見応えのあるマッチアップを繰り広げた生駒(左)と安藤。2017年の高校サッカーをリードする両雄だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[選手権2回戦]鹿児島城西 0(4PK2)0 長崎総科大附/2017年1月2日/等々力
 
 じりじりした展開が続いた。ともに手の内を知り尽くす九州強豪対決だ。長崎総科大附が1回戦に続いてマンマーキングを軸とする5-2-3システムで試合を潰しにかかると、鹿児島城西もリトリートした守備をベースに長い球を多用していく。戦前の予想通り、ピッチのそこかしこでガチガチの肉弾戦が繰り広げられた。
 
 そんななか、注目を集めたのがひとつのマッチアップだ。鹿児島城西のCB生駒仁と長崎総科大附のCF安藤瑞季。ともに2年生ながらチームの"顔"で、U-17日本代表に名を連ねる逸材である。この日は複数のJスカウトが視察に訪れた。この両雄がお目当てであることは明白だ。

【PHOTO】鹿児島城西 0(4PK2)0 長崎総科大附
 

 前半の安藤は空回りが目立った。最前線で起点になろうとする意識が高すぎ、サイドに流れるなど幅広い動きが乏しい。立ちはだかったのは、鹿児島城西の4バックを統率する生駒だ。「瑞季との対戦は楽しみだった。試合前に"どんどん来てくれ。俺も行くから"とだけ話しましたね。思いっきりやり合おうと」と話す1㍍85㌢の偉丈夫は、機先を制して安藤へのクサビのボールをことごとくカット。激しく衝突してもファウルを犯さない、つねにクリーンなチャージで弾き返した。
 
 中盤が省略され、膠着状態に陥ったゲームで存在を示せなかった安藤だが、後半になるとプレーに変化が生まれる。ひとつ低い位置に下がってワンタッチでのポストプレーを心がけ、両サイドに流れては敵のマークを巧みに分散させた。
 
 後半23分、長崎総科大附はMF荒木駿太(2年)を左サイドに配し、本来ウイングのFW宇高魁人(3年)を2列目に配置転換。さらにMF薬真寺孝弥(3年)がアンカー然と振る舞い、深い位置からゲームをコントロールした。やがて、鹿児島城西の守備網にギャップが生まれ、安藤が天性の嗅覚を働かせる。
 
 後半24分にダイレクトパスで荒木の決定機を演出すると、30分にはドリブルでバイタルエリアに侵入して生駒に挑み、ワンフェイクから鋭く左足を一閃。惜しくもゴールの枠を捕えられなかったが、スタンドがもっとも沸いた瞬間だった。
 
「ちょっと下がりすぎてしまった」と反省した生駒だが、ピンチでよく身体を張り、二度に渡って決定的なシュートをブロックするなど、こちらも終始冷静な対応が光った。試合は結局スコアレスで80分を終了。安藤は生駒の元に駆け寄って互いの健闘を称え、そっと腰に手を当てた。

次ページ2017年度も楽しみな両雄のバトル。

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