日本にスーパーFWが生まれないのは「エゴ不足」だけにあらず。ヒントは久保建英や女子選手に

2017年01月02日 加部 究

“空気を読む”予定調和で支配された日本社会では…。

久保建英が上のカテゴリーでもゴールを決められるのは、テクニック、スピード、判断などフットボーラーとしての能力が総合的に優れているからだ。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 ストライカー不在による決定力不足が、日本サッカーの大きな課題だと言われている。とくに近年の日本代表が、アジアカップやロシア・ワールドカップ最終予選で、圧倒的にゲームを支配してシュートを浴びせまくりながら勝ち切れない試合が続いたこともあり、そんな印象が強まった。
 
 しかし視点を変えれば、先のクラブワールドカップでは、アトレティコ・ナシオナルなどは再三のチャンスを決め切れずに敗れたし、逆に鹿島アントラーズはボール支配率では劣りながらも、レアル・マドリーを相手に堂々と渡り合った。むしろ鹿島は大会随一の決定力を示し、その中で金崎夢生らのFWが見劣りすることはなかった。
 
 また欧州でプレーする選手を見渡しても、現状でFWの岡崎慎司、大迫勇也、武藤嘉紀などの活躍ぶりが、2列目の香川真司、清武弘嗣、原口元気らに著しく劣るわけではない。
 
 確かに高くて強くて速くて上手いスーパーなストライカーは不在だが、それは世界中を見渡しても圧倒的な希少価値を持っている。もともと日本人の身体的特性から大型選手を発掘するのは難しいわけで、当然サイズに適したポジションから優れた選手が現われ易いが、決してストライカーだけが極端に手薄ということでもない。
 
 一方で、「なかなかシュートを打たずに、ボール回しに固執する」風潮から、ストライカーが生まれにくい土壌を指摘する声もある。
 
 実際にジュニアの現場を見ると、それを否定できない部分もある。ミニゲームをしていても、崩し切らずにシュートを打つ子が異端視されがちだ。パスで崩そうという共同作業の中で、唐突にシュートを狙うことが、まるで"破壊行為"のように白眼視されてしまうことが少なくない。"空気を読む"予定調和で支配された日本社会では、大胆な個性が嫌われてしまうこともある。
 
 ミドルシュートを狙わない、縦に入れずにサイドや後ろへと無難な選択をする。こうした傾向も、外国の指導者は理解に苦しむ。日本代表でアルベルト・ザッケローニやヴァイッド・ハリルホジッチらが縦パスを強調したのも、崩しに入るまでの無駄が多過ぎると感じたからだろう。
 
 ACミラン・サッカースクール千葉のイタリア人指導者、ルカ・モネーゼ氏からも同様の話を聞いた。
 
「日本の子供たちは小学校に入ると途端にチャレンジをしなくなる。コーチに言われたようにプレーしないと怒られるのだろうが、その結果、Jリーグの試合でも展開に意外性がなく、退屈になる」

次ページシュートを決めるかどうかもテクニックとして考える必要がある。

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