【選手権】無得点でも王者に戦慄。高校ナンバーワンFW岩崎悠人が残した爪痕

2016年12月31日 平野貴也

岩崎はたった1本のシュートで試合の流れを変えた。

岩崎は、タイトなマークを受けながらも危険な場面を作った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 敗れてなお、無得点でもなお、強い印象を残した。第95回全国高校選手権、大会ナンバーワンのストライカーとして注目された京都橘(京都)の岩崎悠人は、わずか1試合で大会を後にした。
 
 12月31日に行なわれた1回戦でインターハイ王者の市立船橋(千葉)を大いに苦しめたが、0-1で敗れた。試合後、岩崎は「終わっちゃいましたね、なんか。負けた気がしていない。市船戦に向けてやって来たことは、できた。でも、セットプレー1本でやられてしまうということは、市船のほうがそこの強さは確実だったかなと思う」と寂しそうに話した。
 
 無得点に終わった。しかし、試合を見た者の脳裏には、岩崎が放った2本のシュートのイメージが焼きついたはずだ。序盤、京都橘は、出足の鋭い市立船橋に押し込まれ、ハーフウェーラインを過ぎたところまでしか前に進めないような状況だった。
 
 しかし、岩崎がたった1本のシュートで試合の流れを変えた。25分、ロングパスを空中で競った岩崎が、U-19日本代表のチームメートである市立船橋DF原輝綺のファウルを受けてFKを獲得。ペナルティアークの手前、正面からやや左の位置だった。
 
 キッカーの岩崎は右足を一振り。鋭く弧を描いたシュートが、ゴール右上へと的確に飛んだ。市立船橋のGK長谷川凌が好守で弾いたものの、あまりにもインパクトの強い一撃に、会場のムードは一変した。
 
 米澤一成監督が「後ろの(守備の)奴も頑張っている中で、ああいうのを見せてくれるとまた頑張れたりするもの。それを見せてくれたかなと思う」と話した通り、続く右CKもゴール正面からのヘディングシュートにつながり、京都橘の反撃ムードが醸成された。
 
 さらにすごかったのは、前半35分のシュートだ。ロングパスに対する相手のクリアが小さくなった場面で味方が左からパスをつなぐと、岩崎は迷わずターンで仕掛け、相手が寄せて来る前に右足を振り抜き、左のゴールポストをたたく強烈なシュートを放った。
 
 岩崎が「完全に入ったと思ったけど、無回転気味でちょっとぶれてポストに当たった」と手ごたえを感じていた1本は、国内トップクラスの堅守を誇る相手の守備陣に戦慄させた。市立船橋の原は「ちょっとフリーにするだけで、かなりの殺傷力がある」とあらためて、岩崎の破壊力に驚いていた。

第95回高校サッカー選手権 1回戦 市立船橋1-0京都橘

次ページノーゴールの記録と戦慄を残して会場を後にした。

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