【選手権】主将交代、負傷離脱――苦しみ抜いた聖和学園のエースが渾身の復活弾!

2016年12月31日 小林健志

6月中旬に左足首靱帯を損傷し、長期離脱を強いられたが…。

値千金の追加点を挙げた西堀(10番)。2回戦での活躍も期待したい。写真:浦正弘

 浦和駒場スタジアムで行なわれた高校選手権1回戦の聖和学園(宮城)-海星(三重)。立ち上がりから海星に攻め込まれる展開だったが、後半の2ゴールで聖和学園が逆転勝利を収めた。流れを変えたのは53分、MF鈴木雅典(3年)に代わってピッチに入ったFW西堀駿太(3年)だった。
 
 西堀はスピードとテクニックを兼ね備えるストライカーとして1年生から選手権メンバーに帯同するなど期待をかけられ、今年は当初キャプテンを務めていた。
 
 ところが、4月に開幕したプリンスリーグ東北はまったく調子が上がらず連戦連敗。1トップを張る西堀自身もゴールを重ねることができず、真面目な西堀は苦悶の表情を浮かべることが多くなった。
 
 6月のインターハイ地区予選も準決勝で東北に敗れ、全国への切符を勝ち取ることができなかった。その後「東北大会に臨む前、加見先生と3年生全員で話し合い、チームが次のステップに進むために自分がキャプテンマークを巻くよりDF小倉滉太(3年)に託してチームを引っ張ってもらったほうが良いと思いました」とキャプテンを交代することになった。
 
 西堀にはさらなる苦難が待っていた。6月中旬に行なわれた東北高校選手権の1回戦・青森山田戦で左足首靱帯を損傷し、長期離脱を強いられたのだ。
 
 奇しくもこの大会で聖和学園は初優勝。プリンスリーグ東北も引き分けや勝利が増えるなど、西堀の離脱後にチームは上昇ムードに転じ、西堀はそれを眺めることしかできなかった。9月上旬にようやく復帰したものの、先発メンバーに復帰できず途中出場でサイドハーフを務めることが増えた。
 
 キャプテン交代、負傷による長期離脱、そしてリザーブの悔しさを味わった。ただ、西堀は、前向きさを失うことは無かった。選手権の地区予選で優勝すると「トップスピードのドリブルや狭いスペースのボールタッチをもう一度見直しました。タッチラインからタッチラインへのダッシュドリブルも居残りで毎日10本やりました」とひたすら練習に励んだ。「縦へのドリブルは常に意識しています。聖和のドリブルサッカーに対応しようとすると相手も後半疲れてきますので、スピードを生かして縦へのドリブルをされたら嫌だと思います」途中出場で活躍するため、自分の武器であるスピードを磨き続けた。
 
 そして今回の選手権1回戦、右サイドハーフとしてピッチに立つと、西堀は自慢のスピードを生かし、何度も海星陣内に攻め込んだ。MF藤井僚哉(3年)のミドルで先制し、1-0で迎えた後半37分。右サイドに流れた藤井のクロスを、ニアに飛び込んだ西堀が、倒れ込みながらも右足でねじ込む。このゴールがダメ押しになり、チームは2-0で勝利した。
 
 西堀の苦労を知る加見成司監督も、「彼が怪我で離脱した時期にチームが変わり始めたなか、いろんな葛藤があったと思いますが、やっとここで活躍してくれて嬉しいです」とゴールを喜んだ。
 
 その西堀は「キャプテンに未練が無いと言ったら嘘になりますが、ここまで来られたのは(小倉)滉太のおかげです」と現キャプテンの小倉へ感謝の気持ちを述べた。
 
 ひたむきで真面目なエースが大舞台で輝きを放てたのは、苦しみのなかでも周囲への感謝を忘れず、結果を出すために前向きな努力を重ねたからに他ならない。
 
「シーズン始まってからゴールという形でチームに貢献できていなかったので、試合の流れを楽にできる追加点が取れて良かったです」と春先の苦悶の表情が嘘のように笑顔を見せた西堀。2回戦の徳島市立戦でも、チームを牽引する活躍を見せたい。
 
文:小林健志(フリーライター)
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