【選手権】「真冬」に輝いた尚志高の‶暴れん坊″FW井上真冬とは何者か

2016年12月31日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

「自分に期待してくれていた人も多かったので、やんないとなって」

後半途中から出場した井上は、63分にヘディングでチーム3点目を奪取。粘るルーテル学院に引導を渡した。写真:徳原隆元

[選手権1回戦]尚志 4ー2 ルーテル学院/2016年12月31日/駒沢
 
 その存在感は2得点した尚志のエース、渡辺公平に劣らず際立っていた。

第95回高校サッカー選手権 1回戦 尚志 4-2 ルーテル学院
 
 互いに点の取り合いとなった一戦は、2-2で迎えた63分に決勝ゴールが生まれる。尚志の右CKの場面で、DF常盤悠のキックに対してニアに頭で飛び込んだのは途中出場のFW井上真冬だった。
 
「いつも『ニアで勝負しろ』って言われている。ニアで触れば勢いでそのまま行けるので、自分としても得意な形です。ヘディングも自信があります」
 
 ボールは逆サイドのゴールネットに吸い込まれ勝ち越しに成功。その後も井上は、果敢にゴールに迫るだけでなく力強いポストプレーで起点にもなるなど、攻撃にリズムをもたらす。69分には渡辺が決めたチーム4点目もお膳立てし、1回戦突破に大きく貢献した。
 
 その名のとおり、「真冬」の大舞台で勝負強さを発揮した3年生ストライカーは、勝ち越しゴールを決めた場面をこう振り返る。
 
「最高だなって。監督も喜んでくれるだろうし、メンバーに入れなかった選手たちも自分に期待してくれていた人も多かったので、やんないとなって」
 
 FWらしく貪欲にゴールを目指すプレースタイルを身上とするゆえに、時に熱くなりすぎて、「練習試合では退場してしまうこともあった」という。そんなキャラクターもあってか、「スタートでいきたい想いはあるんですけど、監督もいろいろ心配してくれて後半から途中出場しているところもあります」と明かす。
 
「そのほうが自分としても良い面が出るところもあるので、監督にはほんと感謝しています」と語る井上は、育ての親への感謝も忘れない。
 
「ウチは変わった家庭で、主にお母さんが僕を育ててくれた。昨日、『絶対ゴール決める』ってラインをしました。良いゴールを決められたので、後でお母さんにありがとうって言いたいです」
 
 この日、スタジアムに駆け付けてくれた母親に最高の姿を見せられた。すでに心は充実感に満ち溢れているが、ここで満足するわけにはいかない。
 
「ベスト4までいって、そこでひとつ勝てば福島県勢として初の決勝進出になる。そこまで行くのは大変ですけど、1戦ずつ戦っていきたい」
 
 ピッチ上のプレー、そして、言動からも‶暴れん坊″の気配を漂わせる井上は、「真冬」の選手権でさらなる飛躍を狙っている。
 
 
取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
 
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