【選手権】まさにしてやったりの快勝劇! 熱情と愛情を注ぎつづける名将、小嶺忠敏のいま

2016年12月31日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

指揮官はいかにして桐光の攻撃を封じ込んだのか

71歳の小嶺監督。いまだ眼光鋭く、テクニカルエリアでは大きなジェスチャーでアピールも。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[選手権1回戦]長崎総科大附 2-0 桐光学園/2016年12月31日/等々力 

 九州王者の誇りと意地が、優勝候補を打ち破った。
 
 第95回全国高校サッカー選手権大会、1回戦屈指の強豪対決だ。DFタビナス・ジェファーソン(3年)、GK茂木秀(3年)のJクラブ入団内定コンビを筆頭に、各ポジションに好タレントがひしめく桐光学園が等々力陸上競技場に登場。対する長崎総科大附(以下、総附)も九州大会とプリンスリーグ九州を制し、FW安藤瑞季(2年)やMF薬真寺孝弥(3年)など実力者が揃う。とはいえ、大会前は神奈川県代表のスカイブルーズ優位との見方が大勢を占めていた。
 
 策を講じてきたのが、総附を率いる71歳の名将、小嶺忠敏監督だ。「普通にやっても止められない」と、スタート布陣を通常の4-1-4-1から、敵アタッカーに3人のマンマーカーを付けたうえでの5バックシステムに変更。桐光自慢のパスワークを寸断し、ハーフウェーラインを越えれば怒涛のハイプレッシャーで複数人が連動してボールを強奪。攻めては手数を掛けずに敵ゴールへの最短距離をたどった。

【PHOTO】1回戦 桐光学園 0-2 長崎総科大附
 
 そして開始7分、いきなり勝負を賭けた戦法が奏功する。ロングボールに呼応したFW宇高魁人(3年)が鋭く持ち出し、並走したFW右田翔(3年)に絶妙なラストパス。これを快速ウインガーが難なくゴールに蹴り込み、電光石火のカウンターを結実させた。
 
 守備の強度とインテンシティーをさらに高める総附。かたや桐光はバイタルエリアまでは持ち込むが最後の局面でプレー精度を欠いてしまう。後半はFW鈴木太我(3年)を投入して長いボールも織り交ぜて揺さぶるも、敵の堅牢を崩すには至らない。すると後半29分、総附は速攻から瞬く間に3対2の局面を作り、安藤のパスを受けた薬真寺が追加点を決める。終盤になってもまるで低下しない機動力と運動量。総附の真骨頂が炸裂した瞬間だった。
 
 今大会直前に行なわれたプレミアリーグ参入戦では、2回戦(12月20日)で浦和レッズユースに0-1と惜敗して涙を呑んだ。桐光学園戦で殊勲の2点目を挙げた主将の薬真寺は、「あの負けを無駄にはしなかった。関東のレベルなりサッカーがどういうものを体感できたのが、今日の試合に上手くつながった」と胸を張った。
 
 だが会心の勝利にも、小嶺監督はあくまで謙虚だった。
 
「一人ひとりの役割分担をはっきりさせただけです。安藤や薬真寺などは能力がありますが、それ以外の選手はそこまでじゃない。それを個々がしっかり自覚してるのが我々の良いところですよ。今日の試合は、自分たちが1年間やってきたことを披露する発表会なんだぞと伝えました。勉強も同じです。やれなければ努力が足りなかったということ。まあ、個々には80点はあげていいでしょうかね。チームとしてはまだまだですが」
 
 そう話してようやく、笑みを浮かべた。
 
 
 

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