【広島】佐藤寿人の男泣きに隠された想い。「立ち止まった瞬間、その先はないから……」

2016年12月24日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「ここで終わるつもりはなかったし、勝つつもりでプレーしていた」

広島でのラストゲームとなり、佐藤は人目をはばからず涙した。 写真;佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯準々決勝]鹿島アントラーズ1-0サンフレッチェ広島/2016年12月24日/茨城県立カシマサッカースタジアム
 
 今季限りでの退団が決まっている佐藤寿人に出番が回ってきたのは、1点ビハインドで迎えた79分だった。
 
 皆川佑介と2トップを形成すると、相手の最終ラインと駆け引きしながら前線で起点になろうとする。しかし、昌子源や植田直通を中心とした鹿島の堅い守備の前に、簡単にボールを持つことさえできず、もどかしい時間が過ぎていく。そういった心情は、84分にアンデルソン・ロペスとの息が合わずにチャンスを逃した際、ジェスチャーを交えて「ここに出してほしい」と指示する姿からも見て取れた。
 
 広島はその後、宮吉拓実を投入してさらに攻撃の圧力を高めたが、決定的なチャンスを作れず。そのままタイムアップを迎え、佐藤の2016シーズン、そして広島の選手としてのキャリアは終わりを告げた。金崎夢生、柴崎岳、西大伍と主力3人を欠いた鹿島に敗れた現実が、佐藤の悔しさを増幅させる。
 
「ここで終わるつもりはなかったし、勝つつもりでプレーしていました。鹿島は3人主力が出ていない状況で、勝つ要素は僕らのほうが多いはずだった。それでも負けたのは、チームとして力がなかったということかなと。隙を見せてはいけないチームに対して、隙を見せたのが敗因。そこを突き詰められなかったのが、今季のウチを象徴している」
 
 その後、「いつかまた必ず佐藤寿人と闘いたい」「何処にいても戦い続ける寿人が好きだ」
「寿人、俺らとともに」「気の済むまでやってこい!」と横断幕が掲げられたスタンド(約1800人が集結)に最後の挨拶に向かう佐藤は、こみ上げる感情を堪え切れず、人目をはばからず何度も手で顔を覆いながら涙していた。どんな時も支えてくれたサポーターは、彼にとってかけがえのない存在だから――。
 
「(サポーターは)いつも一緒に戦っている仲間。苦しい時も一緒に過ごしてきたので、特別な存在だと思っている。涙を流すつもりはなかったですけど、堪えることができなくて……。改めて、素晴らしい仲間と12年間戦ってきたんだなと。決勝まで行って、最後(森﨑)浩司とともにカップを掲げたかった。悔しい想いしかありません」

次ページ「サンフレッチェ広島のことは常に心の中にあるし、僕にとって特別なクラブに変わりはない」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事