【蹴球日本を考える】強敵との連戦で容量を増やした鹿島。とりわけ顕著だった昌子の対応力

2016年12月19日 熊崎敬

ナシオナル戦の前半に比べれば、レアルのプレッシャーは慌てふためくほどではなかった。

大会を通して成長を見せた鹿島の中でも、顕著だったのが昌子を中心とした守備陣の安定。R・マドリー戦でも一歩も引かずに堂々たる戦いを見せた。(C) SOCCER DIGEST

[クラブW杯決勝]レアル・マドリー 4-2 鹿島アントラーズ/2016年12月18日/横浜国際総合競技場

 鹿島がヨーロッパ王者を相手に好勝負を繰り広げた。
 
 ザンビア人の主審がセルヒオ・ラモスに2枚目のイエローカードを出していたら、結果は違うものになったかもしれない。
 
 この大会の鹿島は11日間で4試合を戦ったが、決勝までの3試合はすべて大苦戦だった。
 格下オークランドとの初戦は終盤に逆転勝ち。アフリカ王者のマメロディにも、前半は一方的に押し込まれた。そして番狂わせとなったナシオナル戦も、前半は大ピンチの連続だった。
 
 決勝の相手レアルは過密日程と長旅を経て来日したこともあり、動きが鈍かった。早々と先制したことで、楽に勝てると油断した部分もあったかもしれない。
 
 こうした敵の事情はともかく、決勝の鹿島はレアルを相手に一歩も引くことがなかった。2-2で迎えた80分以降は「勝てるのでは」というムードすら漂った。
 
 鹿島の面々はプレッシャーがかかる場面でも大きなミスをすることはなく、むしろ余裕を持ってプレーしていた。
 金崎や土居は一発で裏を取るような嫌らしいプレーを見せ、西などはロングボールを曲芸のようなトラップで収めてみせた。
 
 こうした普段と変わらないプレーができたのも、苦戦した過去3試合の経験があったからだろう。特にハイプレッシャーに晒されたナシオナル戦の前半に比べれば、レアルのプレッシャーは慌てふためくようなものではなかったはずだ。
 
 つまり鹿島の面々は、強烈な敵と立て続けに対戦することで自身の「容量」を増やしていった。
 
 それが顕著だったのは、最終ラインを引き締めた昌子である。チャンピオンシップ準決勝から堅実な守備を見せている彼は、この大一番で素晴らしいプレーを見せた。
 クリスチアーノ・ロナウドやベンゼマといった強烈なタレントを敵にしても浮足立つことなく、落ち着いて局面を解決していった。1対1の場面でも堂々としていた。
 
 準決勝終了後、昌子はこんなふうに話していた。
「ぼくたちDFはゼロで抑えるのが当たり前。それができたからといって褒められるわけじゃない」
 つまり敵がレアルであっても、ゼロで抑えるのが当たり前。その意識の高さはプレーの端々からも伝わってきた。
 
 強敵との真剣勝負は、成長のいちばんの糧。クラブワールドカップの鹿島と昌子は、改めてそのことを教えてくれた。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)

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