エース、ドラクスラーの“背信行為”に揺れ動くヴォルフスブルク

2016年12月10日 中野吉之伴

CLでは躍進しながらも、ブンデスでは欧州カップ圏内を逃す。

自らの言動でファンの不信感を増大させたドラクスラーは、ブーイングを浴びたことで、さらに移籍への思いを強くしてしまったようだ。以前のインタビューでは、移籍への未練はなく、ヴォルフスブルクでのプレーに満足していると語っていたが……。 (C) Getty Images

 昨シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)出場チームであるヴォルフスブルクだが、ブンデスリーガでは第13節終了時で勝点わずか10の15位と残留争いに苦しんでいる。
 
 2014-15シーズンにはペップ・グアルディオラのバイエルンを4-1で破るなどの躍進を見せ、2位でフィニッシュ。分かっていても止められない快速カウンターを武器に旋風を起こし、ディーター・ヘキング監督がこの年の最優秀監督に選ばれれるといった風に、全てがうまくいったシーズンだった。
 
 だが、どこまでも右肩上がりで勢いが持続するわけではない。確かに昨シーズン、CLで見せたパフォーマンスは素晴らしかった。準々決勝で、のちに優勝するレアル・マドリー相手にホームで先勝するなど、あと一歩のところまで追い込んだその戦いぶりは、欧州メディアからも称賛された。
 
 一方、欧州で名を挙げたのとは対照的に、リーグでは最後まで調子を上げることができなかった。結局、8位止まりで、ヨーロッパリーグ出場権すらも逃してしまったのは痛かった。
 
 再び欧州の舞台へ戻るためにと、シーズン前にはドイツ代表FWマリオ・ゴメス、MFヤニック・ゲルハルト、ポーランド代表ヤクブ・ブワシュチコフスキ、シュツットガルトからダニエル・ディダビら、即戦力を獲得した。
 
 だが、序盤から主力の負傷に加え新戦力がなかなかかみ合わず、流れに乗れないまま下位を低迷。第7節でライプツィヒに0-1で敗れると、ヘキングは解任された。
 
 チームが不振に苦しむなか、混乱の元凶のひとつとされているのが、ユリアン・ドラクスラーの移籍騒動だ。
 
 マンチェスター・シティに移籍したケビン・デ・ブルイネの後継者としてシャルケから14年夏に加入したドラクスラー。クラブの絶対的なエースとして迎え入れられながら、今夏に突然、移籍希望を公言した。
 
 移籍市場が閉まる直前まで、アーセナル、ユベントスやパリ・サンジェルマンをはじめ、様々な噂話がメディアを騒がせたが、結局、関係者の全てが納得できるオファーがなかったことから、実現はしなかった。
 
 一転残留となったものの、それ以来、熱狂的なサポーターの心中には、ドラクスラーへの不信感がくすぶり続けている。
 
 持ち味をいかんなく発揮しているドイツ代表での雄姿とは対照的に、今シーズンのヴォルフスブルクではここまで全く良いプレーができていないという事実も、サポーターをイライラさせる要因のひとつなのかもしれない。
 
 ただの一選手の話ではなく、クラブの主柱のひとりである選手が移籍希望を口にしただけに、影響は計り知れないものがあった。11月下旬、チームマネジャーのクラウス・アロフスは、「ひとりの選手がそんな話をするなんて、クラブへの影響は破滅的なものだった」と語っている。

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