ACL決勝は元Jリーガーたちの競演。全州での第1戦後、元鹿島のカイオを直撃

2016年11月24日 佐々木裕介

UAE代表の10番オマルがふたり? じつはよく似た兄弟も…。

第1戦に敗れたアル・アインだが、アウェーゴールはゲット。これがホームでの第2戦にどう生かされるか。写真:佐々木祐介

 ソウルから南へ約230km、ソウル龍山駅から韓国高速鉄道「KTX」に乗って約1時間40分、全羅北道は全州へやってきた。
 
 日本でも馴染み深い「ビビンパッ」の生まれ故郷だそうだ。また数多くの文化財や名所が点在しており、古き良き韓国を感じられる「歴史の街」でもある。地に降り立った玄関口、全州駅の駅舎も実に韓国らしい佇まいだ。
 
 ACLファイナル1stレグは東地区の全北現代(韓国)と西地区のアル・アイン(UAE)の激突となった。個人的には、東アジアの帯は手に負えない勝負強さを買ってFCソウルで決まりだと踏んでいたが、個人的な予想は脆くも崩れ、今回の全州行きとなった。
 
 しかしJクラブが出場しない日本国内では注目度の低い"決戦"を、わざわざ全州まで見に訪れた理由はふたつある。ACLのレギュレーション上では東と西のクラブは決勝まで当たらず、このアジア東西の雄が真剣勝負で競うタイトルマッチがどれ程のものなのかを肌で感じてみたかったこと。また来るクラブワールドカップを取材するにあたり、テレビの煽り販促ではない、自らの冷静な気持ちを欲情させるネタが欲しかった意味もあったことは事由のひとつである。行くと決めたら情報収集を始めると、意外にも見どころ多き試合だと分かってホッとした。
 
 アル・アインには、ワールドカップ最終予選でも日本代表を苦しめるUAE代表10番のオマル・アブドゥラフマンや代表選手を数多く抱えるUAEの強豪であることは有名だが、カイオ(元鹿島)やドウグラス(元広島 も今年から在籍し、キーパーソンになっていると聞いていた。
 
 また、彼らをホームに迎える全北現代にもキム・ボギョン(元C大阪など)、キム・チャンス(元柏)、イ・ホ(元大宮)、エドゥ(元FC東京)と、とにかく両クラブには我々も馴染みある元Jリーガーが多いのだ。
 
 ACLの常連である両チーム、アル・アインは2002-03年に、全北現代は2006年に制覇している。ともにACLロールオブオナーなのだが、その経験値からこの局面でもバタつかないメンタルを持ち、試合自体にも期待出来るだろうと読んだ訳だ。
 
試合当日は昼過ぎに全州へ到着。遥々来たのだからご当地グルメのひとつくらいは良かろうと本場のビビンパッでパワー補給をしてから、いざスタジアムへ向かった。
 
 全州ワールドカップ競技場は42,477名収容の"専スタ"だ。名前の通りに、2002年日韓ワールドカップの際に新設された。14年の歳月が経ち、椅子に壁や地面にと老朽化は否めないものの、四方を覆う屋根に音がこもり、また構造上からも臨場感を感じられる実に素晴らしい劇場だ。この日スタジアムに集ったファンは36,158人、地方都市だからであろうか、世界も目を遣る朴槿恵スキャンダルよりも、おらが街のクラブの方が重要なのかも知れない。
 
 試合は定刻より5分程遅れて、ド派手な花火と共に始まった。先ず目を疑ったのが「えっ? オマルがふたりいるぞ」。よく見るとオマルとムハンマドという兄弟だったのだが、10番と16番、容姿にプレースタイルまで似ている。いやー遠くからみると分からんがな。
 
 朝から雨模様だった全州、雨をたくさん含んだピッチはかなりぬかるんでいて、どの選手も足を取られ、ちょっとしたミスが多く目立った。
 
 前半開始から全北現代ペースで試合が進むのだが、アル・アインもよく凌ぐ展開、しかしスコアは動かず前半を0-0で折り返した。
 

次ページ第1戦に敗れ少し落ち込んだ雰囲気のカイオが取材に応えてくれた。

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