【Jユースカップ決勝詳報】FC東京U-18の勝因はなんだったのか?

2016年11月19日 川端暁彦

“それ”を実践できる選手は11人どころではない

決勝でも中盤で存在感を誇示した平川(42番)。フットボールIQの高さを示した。写真:川端暁彦

 第24回Jリーグユース選手権大会決勝は、延長戦の末にサンフレッチェ広島ユースを逆転で破ったFC東京U-18が制し、夏秋連覇を達成。3冠に王手をかけた。
 
 勝因はなにかと問われれば、チームとしての総合力と言うほかない。
 
 広島との決勝、FC東京の昇格内定3選手(GK波多野豪、DF岡崎慎、MF鈴木喜丈)はいずれもメンバー外である。だが、メンバーリストを眺めていても戦力的に物足りない印象は皆無だ。むしろ準決勝はJ3優先で不在だったU-16日本代表FW久保建英(中学3年)、万能レフティーのMF生地慶充(3年)といった選手が戻ってきた布陣は重厚感すら漂わせるもの。今大会のキーマンだった左SB荒川滉貴(2年)や、準決勝で2得点のU-17日本代表MF小林真鷹(2年)がベンチスタートとなっていることも、そうした印象を加速させた。
 
「(2得点を挙げた小林をベンチに置くのは)普通あり得ないですよね。荒川も今大会を彩ってくれていた選手だった」
 
 佐藤一樹監督は非情の決断を、そんな言葉で振り返る。あくまで勝つための決断だが、指揮官にそれを促す豊富な戦力あってのジャッジだ。
 
 J3に参加したU-23チームの活動と並行しながら、リーグ戦とカップ戦に臨むなかで着実に厚みを増していった選手層は、今大会に参加したどのチームも持ち得ないものだった。対峙した広島の沢田謙太郎監督は「ちょっといままで対戦できていない(レベルの)チーム」と形容する。
 
 決勝でFC東京のスタイルと強みを物語ったのは、2点ビハインドで迎えた後半立ち上がりだろう。ボランチを含めて「ここだというところで一気に圧を掛けていく」(佐藤監督)迫力は、ユース年代ではなかなか観られないもの。広島の売りである3-4-2-1システムのメリットを活かしたビルドアップを、まさに"破壊"してしまうかのようだった。
 
「(プレスに)来られて嫌だなという恐怖心を与えられるかどうかだった。それは行き切るのか、半信半疑でやるのかで差が出てくる。戦術的なところもあるが、球際の部分で相手を上回れるかは土台の部分」
 
 佐藤監督はそう言い切る。まさに、ひたすら積み上げてきた部分だ。かといって闇雲なプレスにはならず、「『ここ!』というところで圧を掛けられる」(佐藤監督)複数の選手が守備の意図を共有しながら動ける「チームとしての賢さ」(同監督)がある。そしてそれを実践できる選手は11人どころではない。これこそが、青赤軍団の強さだ。
 
 交代出場の荒川が決勝点を決めたのも、FC東京らしさを感じさせるものだった。「ずっと先発だったので、(今日はベンチスタートで)ちょっと落ち込んだ」と言う荒川だが、その落胆を自然と「出たらやってやろう」という前向きなマインドに変換させる空気がチームにはある。
 
 次なる目標はプレミアリーグEAST優勝からチャンピオンシップを制しての3冠。J3は11月20日に閉幕するため、岡崎や鈴木も合流するだろう。ただ、佐藤監督は「彼らのポジションがあるかは分からないよ」と言って微笑んだ。それほど充実した戦力が、いまのFC東京U-18には揃っている。
 

取材・文:川端暁彦
 
 
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