【日本代表】ケルンで蘇った〝半端ない〞大迫を、前線の軸に据える価値はあるのか?

2016年11月10日 清水英斗

今のケルンでは、大迫の良さがすべて引き出される。

ケルンのペーター・シュテーガー監督によれば、大迫は2トップの意識でプレーしているそうだ。(C)Getty Images

 好調のケルンで、大迫勇也が〝半端ない〞プレーを連発している姿を見ると、2014年の苦い記憶がよみがえる。
 
 ペナルティエリアの幅に留まった1トップが、中盤に下がらずCBを背負う。それがザックジャパンの約束事だった。2列目の香川真司や本田圭佑にスペースを与えるために、最前線の大迫はプレーエリアを制限された。
 
 大迫のパフォーマンスは悪くなかった。DFを身体で押さえ、ポストプレーヤーの役割を粛々とこなす。チームプレーとしては及第点だ。しかし、それは決して〝半端ない〞大迫の姿ではなかった。
 
 あれから2年。大迫はケルンで自由な空気を吸っている。4-2-3-1のトップ下での起用が主だが、 ペーター・シュテーガー監督によれば、本人は2トップの意識でプレーしているそうだ。DFを背負わず360度の自由があることに加え、CFのアントニー・モデストも多彩なプレーをする。これにより、創造的なコンビネーションを生み出している。実に居心地が良さそうだ。
 
 そんな彼を見ていると、第87回全国高校選手権を思い出す。当時、大迫擁する鹿児島城西高と準々決勝で戦った滝川二高のキャプテン、中西隆裕がロッカールームで泣きなが ら語ったシーンが有名だ。「大迫半端ないって! 後ろ向きのボール、めっちゃトラップするもん! そんなんできひんやん普通……」。
 
 きっとケルンのファンも、この言葉に頷いてくれるのではないか。広範囲に動き、縦パスを受けると、素早くターンしてスルーパス。難しい浮き球のパスだろうと、相手に囲まれていようと、見事に収めてすり抜け、スムーズにつなぐ。ここまでのクオリティを持った選手は、ケルンでは大迫以外にいない。
 
 そうだった。巧みなポストワークや強烈なシュートなど、持ち味の多さゆえに忘れかけていたが、大迫の元々のインパクトは、〝半端ない″トラップだった。
 
 今のケルンでは、大迫の良さがすべて引き出される。キャプテンのヨナス・ヘクターは、「ついに本領発揮か。彼は技術が良くて、弱点が少ない選手だよ」と、在籍3年目の好調アタッカーを評している。

次ページハリルホジッチ監督が最も欲しがっていたものを大迫は持っている。

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