【ドイツ在住記者の視点】ケルンでブレイクした大迫が日本代表にもたらすもの

2016年11月09日 中野吉之伴

本来のポジションで、シュートに持ち込む感覚を取り戻した。

厳しいプレッシャーを受けても、全くボールコントロールを乱すことなく、スムーズな動きでチャンスを創り、フィニッシュに絡む。先週末のフランクフルト戦では精彩を欠いたものの、大迫への評価は高まる一方である。 (C) Getty Images

「サッカー界のおとぎ話のようだ」
 
 10月20日、ケルンが大迫勇也との契約を2020年まで延長したと発表すると、『ビルト』紙は、そのように驚きを表現した。
 
 それも無理はないのかもしれない。昨シーズンまでは地元ファンからもため息が漏れ、叱責が飛ぶことが少なくなかった大迫が、序盤からの好調を持続させ、常に躍動感のあるプレーでスタジアムの熱狂を誘っているのだ。
 
 RBライプツィヒ戦でのゴールを『エクスプレス』紙は「ファンタスティックなプレー」とべた褒めし、『スポーツビルト』誌では単独インタビューが掲載された。
 
 クラブ関係者やファンからの賛辞も続く。 監督のペーター・シュテーガーは「以前よりもくだけた感じになった。ユウヤは普通ではないサッカー選手なんだ」と称賛を惜しまない。
 
 そして、リーグ得点王争いでトップに立つアントニー・モデストを抑えて、ケルン・ファン選定の「10月のMVP」に輝いている。
 
 契約延長時にクラブホームページに紹介された「チームは結果を残しているし、そのなかで僕は居場所を見つけることができた」というコメントからは、チームのために戦える場にいる喜びと、自身の力を発揮できているという自信が感じられる。
 
 ケルンでの好調さを評価され、日本代表にも復帰した大迫。ここでは、彼が今シーズン見せているプレーを分析し、代表でどのようなプレーが期待されるかについて考察してみたいと思う。
 
 フィニッシュに絡む動きについては、言うまでもない。特に今シーズンは、ペナルティーエリアでボールを受けてからシュートに持ち込む流れが、非常に滑らかで素早い。
 
『スポーツビルト』誌のインタビューでは、「FWで使ってもらえると、自分の直感でプレーできる」と答えていたが、本来のポジションでシュートに持ち込む感覚を取り戻している。
 
 その他で目を引くのが、大きな動きからではなく、細かいステップチェンジから相手の嫌がる場所にポジションを取れるところだ。
 
 方向とリズムを変えたと思えないくらいのスムーズなステップワークで相手の裏を取ることができれば、そこに一瞬の間を作り出すことができる。そして一瞬の間を作り出せれば、そこにボールを収められる巧さと強さを大迫は持っている。
 
 こうした動きができると、相手が守備を固めてスペースがないところでも、ボールを受けるための空間を作り出すことができるのだ。

次ページモデストのいない日本代表ではさらに多くの役割を担うことに。

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