【仙台】さらば、クラブ史上最高のストライカー。ウイルソンは最後まで顔を上げていた

2016年11月05日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「どんな時でも私は一目置いていた」(渡邉監督)

セレモニーで別れの挨拶をするウイルソン。コーチ時代から知る渡邉監督は「残した功績は素晴らしい」と賛辞を惜しまなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 どれだけ、ウイルソンという選手が愛されていたか。それは、試合前練習から引き揚げてきた選手とスタッフが、仲間たちの姿を見にグランドレベルに顔を出した彼とタッチを交わした際の表情からよく分かる。
 
 どれだけ、ウイルソンという選手が必要とされていたか。それは、サポーターが背番号9をコレオグラフィとして作り、「オー、ウイルソン、ゲットゴール!」というチャントを叫んだ光景からよく分かる。
 
 ここ数年は怪我に苦しんで満足なプレーを披露できなかった。それでもウイルソンは、どんな状況でも、紛れもなくエースであり、ストライカーであった。ゴールへの期待は、いつも彼が背負った。
 
 今季からFC東京から期限付き移籍で加入した三田啓貴は言う。
 
「本当に偉大な選手。彼が14年まで付けていた18番を背負わせてもらった責任を感じて、プレーしていた。チームがなかなか勝てなかった第2ステージ序盤の3試合連続ゴール(4節・新潟戦、5節・湘南戦、6節・福岡戦)は本当にすごかったし、あれでチームは救われた」
 
 ピッチに立てば何かを起こしてくれる――。だから渡邉晋監督は、怪我明けでコンディションが万全とは言えない状態でも、迷わずに途中からピッチに送り出した。
 
 そんなウイルソンに仲間たちはボールを集めた。その姿を見て、サポーターはより一層の歓声を上げた。ユアテックスタジアム仙台が揺れた。
 
 コーチ、ヘッドコーチ、監督としてベンチからその姿を見守り続けた渡邉監督は言う。
 
「クオリティの非常に高いエースストライカー。どんな時でも私は一目置いていた。それはともにプレーしている選手もそうだと思う。ここ数シーズンは万全の状態でいる期間があまり長くなかったのは本人も悔しいだろうけど、一緒にやっている私からしても本当に残念だった。
 
 それでもリスペクトしていたし、どんな状態でもウイルソンのエネルギーとパワーを必要としていた。残した功績は素晴らしいし、彼から学んだこともたくさんある。それは我々の財産。意思を引き継いで、今後につなげていかなければと思う」

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