ブラジルの偉大なるキャプテン逝去…最大級の敬意をもって送られる

2016年10月26日 サッカーダイジェストWeb編集部

過去の偉人たちと同じように、遺体は消防車で運ばれることに。

史上最強のチームをまとめた史上最高のキャプテン(上段右端)。指導者としても、国内外の多くのクラブ、代表チームを率いた。なお息子のトーレス(登録名)は1995~2000年に名古屋グランパスでプレーし、鉄壁のCBとして2度の天皇杯優勝などに貢献した。 (C) Getty Images

 10月25日、元ブラジル代表のカルロス・アウベルトが心臓発作のため、72歳で亡くなった。
 
 当時の午前11時に、自宅でクロスワードパズルを楽しんでいた最中に調子が悪くなり、夫人によって病院に運ばれたものの、帰らぬ人となったという。
 
 圧倒的な強さで全勝優勝を飾った1970年メキシコ・ワールドカップで右SBを務めた彼は、3度目の優勝を飾った史上最強チームをピッチ上で束ねたキャプテンであり、以降、どの時代でもキャプテンの代名詞的存在として尊敬されてきた。
 
 クラブでは、1963年のデビュー以来、フルミネンセ、サントス、ボタフォゴ、フラメンゴと国内のクラブを渡り歩き、77年からはアメリカのNASL(北米リーグ)に参加。ニューヨーク・コスモスなどでプレーした。
 
 攻守で高いレベルを誇り、大事な局面でフィニッシュにも絡んだSB。70年W杯決勝のイタリア戦、ペレのアシストを受け、トドメの4点目を右足で強烈に叩き込んだ場面は、同大会のハイライトシーンとして、いまだに語り継がれている。
 
 また、W杯出場は70年大会の一度であり、他に複数の大会を経験した選手は多くいたにもかかわらず、文句なしでキャプテンに選ばれるなど、その人間性とリーダーシップは多くの人々を魅了した。
 
「トリカンペオン(3度の世界制覇)」をともに果たした"王様"ペレは「私の友人であり兄弟でもある彼の死に、深い悲しみを味わっている」と声明を発表している。
 
 また、ニューヨーク・コスモスでともにプレーしたドイツのフランツ・ベッケンバウアーも、「大きなショックを受けている。彼は兄弟であり、最高の友人だった」と、同時代を生きたライバル、そして仲間の死を悼んだ。
 
 葬儀は、ブラジル・サッカー連盟(CBF)のオフィスビルで行なわれ、親族、元チームメイトの他、マウロ・ガウボン、デヤン・ペトコビッチ、ベベット、ロベルト・ディナミッチといった元選手から、現ブラジル代表監督チッチ、そして各クラブやCBF関係者が多く参列した。
 
 86年メキシコ大会、90年イタリア大会と2度のW杯に出場し、98年にはバスコ・ダ・ガマで南米制覇にも貢献した名DFマウロ・ガウボンは「大きな喪失だ。選手として、コーチとしても、コメンテーターとしても、そして人間としても、良きお手本となる人だった」と偉大な先輩を称えた。
 
 そして、30年以上連れ添ったテレジーニャ夫人は、「ともに過ごせた素晴らしい30年間は、ここで語り切ることはできない」と語っている(『O GLOBO』による)。
 
 なおCBFは、カルロス・アウベルトの死を悼み、3日間、喪に服すことを発表した。
 
 ブラジル代表史上最強といわれた70年W杯のメンバーではこれまで、エベラウド(74年)、フォンタナ(80年)フェリックス(2012年)、ジョエル(14年)が、すでにこの世を去っている。
 
 また今年の8月16日には、FIFA会長としてサッカーの発展に大きな貢献を果たしたジョアン・アベランジェが100歳で亡くなるなど、ブラジル・サッカー界に悲報が相次ぐこととなった。
 
 国内外でその死を惜しまれている"偉大なキャプテン"、カルロス・アウベルト。ブラジルの英雄として、これまでの同国の偉人がそうであったように、遺体は消防車に載せられて、現地時間の26日午前11時に埋葬される予定である。
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