【内田篤人の告白】希望と絶望の狭間で<パート4>。「復帰できないと思っている人たちには…」

2016年10月21日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「今は不思議と不安がないです」

内田の復活に期待したい。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 7月初旬、鹿島のクラブハウスを訪れると、練習のピッチには内田の姿があった。パスゲームもこなし、正確なロングボールを何本も味方に通す。右ひざの状態は見るからに良くなっており、そう遠くないうちに復帰できるだろうという期待感を持てた。
 
 その後、シャルケで復帰に向けて調整を続ける内田が10月4日にはMRI検査で「良い結果」を得た。カムバックに向けてひとつ階段を上ったわけだが、そこに至るまでの苦労などを本人の声で振り返りたい。以下のインタビューは、7月にシャルケへ渡る前に記録したものだ。<パート1、2、3>に続き、最終章の<パート4>をお届けしよう。

【内田篤人の告白】希望と絶望の狭間で<パート1>。「その時は正直、治る気がしなかった」
 
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──日本代表はどうすれば強くなりますか?
 
「答は持っていますが、ここでは言えません(笑)」
 
──戦術関連ではない?
 
「違います。あっ、この前、本田さんと珍しくサッカーの話をしました。その時にも『どうしたら強くなるか、なにが必要か』って訊かれたので素直に答えたら、『お前もそう思っているのか』って。考えていることが本田さんと一緒だったんですよ」
 
──本田選手とは、他にどんな会話を?
 
「監督やコーチのこととかですね。監督でなにより重要なのはカリスマ性。『行け!』って指示されたら、すかさず『はい!』って言えるような存在がベスト、それから戦術を落とし込むのはコーチの役割という認識も本田さんと同じでした」
 
──そうした話を過去に本田選手とした記憶は?
 
「ないですね。おそらく初めてです。自然とそういう会話になりました。でも、ちょっと恥ずかしい。基本的に、(代表活動で)サッカーの話を誰ともしないので」
 
──ここまでの声のトーンから判断するかぎり、ストレスはだいぶ減ったのでは?
 
「確かに減りましたね。2か月くらい前までは治る気がしなくて、怪我をして初めて苛立ちましたけどね。焦りみたいなものもあって」
 
──半年前は「焦りはない」と言っていましたが。
 
「実は、陰では『やべえ、治る気がしない』と思っていました。正直、光が見えませんでした。アスリートはお酒に逃げるわけにも行かないので、気持ち的に相当参っていましたね。でも、今は不思議と不安がないです。これまでちゃんと頭を使ってサッカーをやってきたし、そこまで動けなくてもやれる気がする。もとから動くほうではないので、ピッチでの感覚さえ掴めれば大丈夫かなと。良い話、してもいいですか?」
 
──もちろんです。
 
「最近ウォーミングアップの時に訊いているのが、洋楽の『ファイトソング』。歌詞の一部を和訳すると『私の闘いの歌、人生を取り戻す歌、私はもう大丈夫と証明する歌、誰も信じてくれなくたって構わない、だって私にはまだ闘う力が漲っているんだから』という感じで、『これ、俺にぴったりじゃん』って。勇気をもらえる歌に出合えたことは、ひとつの奇跡なんじゃないかと。はい、良い話でした(笑)」

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