【なでしこリーグ】〝リオ・ショック″を払拭できるか。今季リーグ戦に見る人気回復の鍵

2016年10月14日 西森彰

〝リオ・ショック″を受けるなか、リーグ人気を支えたニューカマー・長野L

(図)今季と昨季の観客動員数。中断期間前を「前期」とし、中断期間後を「後期」とする。

 今季の開幕当初、なでしこジャパンのリオ五輪予選敗退の影響は、心配されていたよりも小さかった。自国開催ということもあり、各メディアが豊富に伝えた五輪予選が、いわば〝プレシーズントーナメント″のような役割を果たし、中断期間前の平均観客動員数(図)は、昨季(女子ワールドカップ中断前の試合を対象に集計)を上回った。

 しかし、リオ五輪後のシーズン後半にかけて、人気に陰りが見える。女子ワールドカップ準優勝をカンフル剤に1.5倍近く伸びた昨季とは逆に、リオ五輪で魅力をプレゼンできなかったことで、中断期間後は観客数を減らし、年間平均観客数では、昨季を下回っている。
 
 さらに、アメリカのシアトル・レインに移籍した川澄奈穂美(10月12日にINACへのレンタル復帰を発表)、負傷療養中の宮間あやら代表の主力選手を欠いたINAC、湯郷ベルは、中断前の3分の2程度まで観客数が落ち込んでいる。
 
〝リオ・ショック″を受けるなか、リーグの人気を支えた最大の功労者は、今年1部に昇格したばかりの新星、長野Lだ。第16節を終えて3位につけ、成績、観客動員数ともに好調。五輪予選でブレイクした横山久美を中心に「肉を切らせて骨を断つ」超攻撃的サッカーで、1試合平均で2得点を上回る。魅力的なサッカーを展開するチームとあって、上位陣との直接対決では、6,733人(INAC戦)、5,160人(ベレーザ戦)もの観客が、昨年完成したばかりの新スタジアムに足を運んだ。
 
 また、長野Lの成功には、本田美登里監督の存在は欠かせなかった。「2,000人、3,000人のお客さんを毎回集めるチームを作るのは、なでしこリーグで戦えるチームを作る以上に難しい」と言う指揮官は、地元メディアやチームを支えるスタッフとの信頼関係構築など、湯郷ベルを指揮した際に得たノウハウを、長野Lに注ぎ込んだのだ。
 
「点をとること。そして試合に勝つこと。それが試合を見に来てくれるお客さんを増やし、チームを支えるお金を集めることに繋がっていくと思います」
 
 本田監督がそう語るように、90分間で観客に喜怒哀楽できる場面をどれだけたくさん提供できるか――。オーソドックスだが、〝リオ・ショック″を抱えるなでしこ人気を回復するために、最も重要なアプローチだ。

次ページ優勝したベレーザに見る、理想的な世代融合。

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