U-19日本代表の救世主に!? 柏レイソルU-18の至宝、中村駿太の心意気

2016年10月04日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

サプライズで滑り込んだ「23番目の男」

実戦感覚を買われての“飛び級招集”。FW4番手の立ち位置から、中村の挑戦が始まる。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 どう考えても現実味に乏しい。今回がダメでも終わりじゃない、来年のU-20ワールドカップまでにまたアピールすればいい──。中村駿太は、腹をくくっていた。
 
 9月28日、日本サッカー協会は2週間後に迫ったU-19アジア選手権に臨む、U-19日本代表メンバー23名を発表した。1997年1月1日以降に生まれた選手が選考対象で、今春にプロの門を叩いた逸材たちを中心に、強化を進めてきたチームだ。その大会登録メンバーに、1999年5月10日生まれの高校2年生が抜擢招集された。しかも激戦区であるFWの4枠に、見事滑り込んだ。中村は「リストに自分の名前が載っていて、正直びっくりしました」と話す。
 
 柏レイソルU-18でエースを張っているとはいえ、選出は望み薄だった。これまで何度か招集され、大きなグループの一員だったのは間違いないが、試合出場は今年5月の韓国遠征時と、8月のSBSカップ時の合計2回のみ。9月上旬のフランス・UAE遠征は落選し、最終選考のうえで最重要だった9月下旬のミニ合宿は、招集されたもののチーム事情で辞退していた。可能性が消えたと、本人は覚悟していたはずだ。
 
 しかし、チームを率いる内山篤監督の考えは違った。そのミニ合宿の直前、クラブが中村の招集辞退をJFAに伝えた翌日のことだ。指揮官は中村のコンディションをチェックすべく、プレミアリーグEASTの試合会場に姿を現わしたという。中村はベンチ外だったため顔を合わすことさえ叶わなかったが、その時点で、内山監督の答は出ていたのかもしれない。
 
 驚きのメンバー発表を受けて、中村はすぐさまピンと来た。以前、内山監督に言われたことがある。「とにかく試合に出ろ」、と。実際に指揮官は選考基準のひとつに「実戦感覚」を挙げていた。
 
 2トップを採用しているU-19日本代表において、そのファーストチョイスは小川航基(ジュビロ磐田)と岸本武流(セレッソ大阪)のコンビだろう。どちらもプロ1年目。FWというポジション柄、すぐさまレギュラーの座を掴むのはどうして難しい。夏を過ぎ、J3を戦うU-23チームで定位置を掴んだ岸本とは対照的に、小川は出場機会にまるで恵まれず、ルヴァンカップで2試合のアピールチャンスを得たのみだ。
 
 はたして90分間を戦い切れるか。内山監督が危惧するのはまさにそこで、今回選出したバックアッパーのふたりが常時フル出場している高校生なのは偶然ではないだろう。岩崎悠人(京都橘/3年)はプリンスリーグ関西で、中村はプレミアリーグEASTで得点感覚を研ぎ澄ませている。
 
 U-19日本代表での自身の立ち位置を、170㌢の点取り屋はどう捉えているのか。
 
「年上の経験豊富な選手ばかりで、本当に僕が一番下手なんですけど、体力的なところやコンディションを評価してもらえたのかもしれません。フォワードの4番手というより、僕は23人のなかで一番最後くらいですよ。やっぱり、ずっと一緒にやってきたチームプレーというのがあると思うんです。そのチームのスピードにまずは慣れなければ、なにも始まらない。逆にそこさえ馴染めれば、ある程度自分の良さは出せるんじゃないかなと。少しずつフィットしていいプレーをして、チャンスの回数を増やしていきたいです。焦ってもしょうがないので」
 

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