「バルサらしくない」セルジ・ロベルトがメッシと右サイドの新時代を切り開く

2016年10月03日 豊福晋

誰よりも走り、誰よりもがむしゃらに相手にぶつかっていった。

右SBの定位置を掴んだ今シーズンは、メッシ(左)と縦のコンビを形成して躍動。セルジ・ロベルト(右)の評価はうなぎ登りだ。写真:Rafa HUERTA

 バルセロナの新たな時代が、右サイドから始まろうとしている。
 
 セルジ・ロベルト。
 
 ミッドフィルダーでもサイドバックでもない。時には偽9番、あるいはウイングも。CBとGK以外ならどこでも機能する希有な存在だ。
 
 リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールのMSNをはじめビッグネームが居並ぶ豪華なチームの中では地味だが、今シーズンのバルサでは屈指の高い評価を受けている。
 
「バルサとスペイン代表の右サイドバックは10年安泰」
 
 そんな声も聞こえてくる。
 
 バルサだけではなく、スペイン代表においてもここにきて、ファンフラン(A・マドリー)、ダニエル・カルバハル(R・マドリー)、セサル・アスピリクエタ(チェルシー)、マリオ・ガスパール(ビジャレル)、エクトル・ベジェリン(アーセナル)らが並ぶ、「激戦区」右サイドバックの序列を一気に塗り替えたのだ。
 
 9月28日のチャンピオンズ・リーグ2節、ボルシアMG戦では、11.90kmを走りぬくチーム一の運動量を見せた。いつものことだ。ここまでのCLにおいてセルジは、バルサ随一の走行距離を記録している。
 
 元々のポジションはインテリオール(インサイドハーフ)とピボーテ(アンカー)。バルセロナBでプレーしていた頃は、運動量のある英国的なボックス・トゥ・ボックス型のミッドフィルダーだった。
 
 バルサBにはセルジよりボール扱いに長けた選手がたくさんいた。しかし、彼は誰よりも走り、誰よりもがむしゃらに相手にぶつかっていった。
 
 悪く言えば、バルサらしさはない。テクニカルな部分で言えば、カンテラの中では凡庸な部類に属していた。しかしそれが逆に、別の良さを引き出した。
 
 昨夏の時点でクラブ首脳陣は、2016年1月に他クラブへ移籍させることを決めていたという。インテリオールにはアンドレス・イニエスタとイバン・ラキティッチ、ピボーテにはセルヒオ・ブスケッツが君臨するバルサの中盤には、"空き"がなかったからだ。
 
 しかし、ルイス・エンリケ監督はセルジのポテンシャルを信じて、あらゆるポジションで起用した。そして、いつしか右サイドバックに定着する。
 
 当然ながら、典型的なサイドバックではない。ボールの持ち方もサイドバックというよりは、インテリオールのそれだ。ドリブルで縦へ抜けるスキルは高くはない。しかし、ボールを受ける能力は絶品だ。前方のスペースに入っていくタイミングが絶妙で、右サイドのセルジを使った崩しは、今シーズンのバルサが多用するパターンのひとつになっている。

次ページ「ダニ・アウベスの時代」をBチームとトップチームを往復しながら眺めた。

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