世界でも上位狙えるイラクとの「事実上の決勝戦」。U-16日本が見せた粘りと脆さ

2016年09月30日 川端暁彦

「攻めに行く姿勢が裏目に出てしまった」

今大会の日本の挑戦はベスト4で幕を閉じたが、この悔しさは来年のU-17ワールドカップで晴らしたい。(C) JFA

[U-16アジア選手権・準決勝]日本 2-4 イラク/9月29日/インド・ゴア

 正直に言えば、グループステージの3試合はあまりにもクオリティが低すぎた。日本が強すぎるという錯覚を起こしかけたほどだが、他グループの試合を観たことで、考えを改めざるを得なかった。どうも日本はクジ運に恵まれすぎたようだと気付かされた。
 
 準々決勝の相手であるUAEは、その意味でグループステージより数段手強い相手だった。そして準決勝のイラクは、そこからさらに数段上。おそらく世界大会でも上位を狙えるクラスの強敵だった。森山佳郎監督も、他国の記者も「事実上の決勝戦」と見なしていたイラクとのゲームは、予想以上に苦しいゲームとなった。
 
 序盤から日本は今ひとつペースを掴めない。雨の中で連戦を繰り返したことでピッチ状態が悪化していたことも大きく、思うようにボールが動かせず、イラクの圧力をなかなかはがせない。18分にはややアンラッキーな形で先制点も許し、流れは完全に失っていた。
 
 それでも30分にMF平川怜の絶妙なパスから抜け出したFW山田寛人が豪快に決めて同点とすると、さらに43分には山田のクロスをニアでFW宮代大聖がスルーしてイラクGKをあざむく形から逆転ゴール。日本は2回の決定機で2点を奪う「決定力」を見せて、リードを奪い取った。
 
 しかし、確率の神様は平等だったのか。後半は開始から良い形を作って日本が攻め立てるが、宮代大聖の決定的シュートは相手GK、バー、ポストに3度阻まれてゴールならず。すると66分、逆にFKの流れからイラクに粘り強く決められて同点に追い付かれてしまう。日本はこれを受けて、59分に途中出場していた久保建英に続き、69分にFW中村敬斗をピッチに送り出すが、「交代でギアを上げるはずが、攻めに行く姿勢が裏目に出てしまった」(森山監督)。
 
 驚異的なスピードを持ち、スタミナ的にも切れない「圧倒的な個の力」(森山監督)を持つイラクのタムードが日本の最終ラインを何度も脅かす。72分にはGK谷晃生も抜かれる大ピンチをDF瀬古歩夢の奇跡的な守備で凌いだが、80分に再びタムードに抜け出されると、今度はその瀬古が痛恨のファウル。2枚目のイエローカードで退場となった上に、ここで与えたPKも決められ、2-3と逆転を許してしまった。さらにアディショナルタイムにもタムードの抜け出しからPKを与え、万事休す。2-4のスコアで試合終了の笛をきくこととなった。
 
 森山監督は「アジアの王者としてU-17ワールドカップに行くことを目指したが、達成できなかった」と悔しさをにじませつつ、「この試合で個々人が何をできて、何ができなかったか。そしてチームとして何ができて、何ができなかったかを見直さないといけない」と世界大会に向けて、前を向いた。
 
 来年は欧州、南米、そしてアフリカの3大陸への遠征が予定されており、徹底して選手を鍛え直して世界大会へ備える覚悟だ。「またみんなが、ここから強烈な一歩を踏み出してくれるなら」(森山監督)、この敗戦が日本サッカーの未来にとって無駄になることはない。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)
 
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