映画「U-31」公開記念! 谷健二監督とジェフ千葉の高橋悠太GMによる異色対談。「華やかなプレーの裏側にさまざまな人間ドラマがある」

2016年09月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

誰にでも必ず訪れる転機と、どう向き合うのか?

ジェフ千葉が製作に全面協力した映画『U-31』の公開を記念してお送りする対談企画。第4弾は、映画の谷健二監督、ジェフ千葉の高橋悠太GMが、映画について、仕事について語る。映画監督とサッカーチームのGM、どちらも、なかなかなることができない職業で、お互いに興味津々のようだった。


高橋 あ、シャツがかぶってしまいましたね。
 
谷  ほんとですね(笑)。今日はよろしくお願いします。
 
―― まず、監督に質問です。原作のファンだったということですが、最初に読んだ印象は?
 
谷 従来のスポーツマンガだと、主人公がどんどん大きく、強くなっていくストーリーが多いですが、この「U-31」は、下り坂の選手に焦点を当てていて、描かれている人間ドラマが興味深かかった。自分も、サッカーをしていましたし、好きな作品だったので、今回、映像化に携わることができて本当に光栄です。
 
―― 撮影にはジェフ千葉さんが全面協力をしていますね。
 
谷 原作のクラブがジェフだったので、最初にお声をかけさせてもらいました。撮影には、クラブハウスや練習場も使わせてもらって、本当にありがたかったです。
 
―― ここまでしっかりタッグを組ことはめずらしいことなのでは?
 
高橋 映画の舞台なんて、うちで大丈夫? と思っていましたが、そういうことでしたら。実際、千葉はサッカー盛んですし、千葉出身のJリーガーも多い。盛り上がってくれたら。
 
―― この映画は、ベテランの域に入った主人公が戦力外通告を受けるところからスタートします。高橋GMは、実際にそういう仕事しているわけですよね?
 
高橋 契約満了や移籍はサッカーの世界ではよくあること。この仕事をさせてもらって、何年か経ちますが、やはり契約満了を伝えるのは、いちばんやりたくない仕事ですね。年末に、必ず直面することですが、慣れてしまったり、当たり前になったりすることはありません。
 
―― 選手が感情的になってしまう場面も?
 
高橋 最後の最後まで、選手をリスペクトする気持ちを忘れてはダメです。中には感謝の言葉をかけてくれる選手もいました。人間性が出ますね。
 
―― 映画の中では、ベテラン選手、31歳のさまざまな葛藤を描かれています。
 
谷  僕は元々、会社員だったんですが、サラリーマンでいうと、40代で出世コースに残るか、外れるかという岐路に立つと思うんです。サッカー選手の場合、それが30代で起こるし、どんな職業でも、この先のキャリアについて考えるタイミングはある。見方によってはどんな立場の人にも響く内容になっていると思います。
 
高橋 そうですね、30歳を過ぎると自分のキャリアに当然プライドを持ちますし、頑固になって、人の意見を聞けなくなってしまう。きっとサラリーマンの世界でも同じですよね。自分が正しいと思っていたことを、どっかのところで壊されて、でも新たな自分を見つけられるかで、長く現役を続けられるかが決まってくる。作品の中で、その葛藤が上手く表現されていると思います。
 
―― やはりベテランはチームに必要ですか?
 
高橋 いまのサッカー界は、若いというだけで価値がある。それは事実です。ただ、チームをつくる上で、それだけでは強くならない。いろいろ経験をして、人間力があって、リーダーシップを張れる選手は、絶対に必要だし、どこもほしい人材。そういった選手を見極めることが自分のポジションの重要な仕事だと思っています。
 
―― 千葉にもベテランの選手も何人かいますね。
 
高橋 スタッフ、ファンにとっても、大切な存在です。ただ、長くいることによって彼らから厳しさが失われてしまうこともあるし、難しいですよね。過去の挫折や苦い経験を表に出してこそ、ベテランの価値があるわけですし。
 
谷  今回の主人公がまさにそういう状況でした。プライドだけ高くて、巧いけどチームに貢献できない、扱いづらい選手だったんだと思います。古巣に復帰する唯一の条件が10番でした。自分ががむしゃらにやっていたころの背番号でやりたい、ということで。
 
―― そんな主人公も、周囲の人の言葉や思いに触れて、徐々に変わっていきます。
 
高橋 自分で気づくことは難しい。だから監督という存在は重要なんだと思う。嫌なことも含めて、はっきり選手に伝えてあげられるかどうかは、とても大切なこと。これはこれからのジェフの課題でもありますね。

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