【大宮】江坂任と清水慎太郎が育む絆――強い信頼が劇的な勝ち越し弾を生んだ

2016年08月21日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「キクさんにも『絶対にチャンスはある』と言われていた」(江坂)

89分の江坂のゴールが決勝点に。清水のピンポイントクロスと江坂の動き出しの秀逸さが生んだ歓喜の瞬間だった。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1・第2ステージ9節]大宮 2-1 仙台 8月20日/NACK
 
 まさに以心伝心の一撃だった。1-1で迎えた試合終了間際の89分、清水慎太郎のアーリークロスは見事な軌道を描いてゴール前へ。走り込んでいた江坂任が右足で合わせると、ボールはゴールネットを揺らし、ホームチームサポーターの歓声が響いた。
 
 年間勝点36で並んでいた両者の戦いは、キックオフ直後から大宮ペースだった。ウイルソンとハモン・ロペスの強力2トップを擁する相手に対して、「ボールポゼッションが最大の守備」(渋谷洋樹監督)の言葉を忠実に実行する。
 
 守備も4-4-2のラインをコンパクトに保ちつつ、連動して前線からアタックする。たとえ自陣深くまでボールを運ばれたとしても冷静に対処。むやみにクリアをしなかった。そうして丁寧にボールをつないで、ジリジリと押し込む。プラン通り、と言って過言ではないだろう。
 
 そんななかで大宮が先制する。34分、GK塩田仁史のスローイングを右サイドの江坂を経由して家長昭博へ。食い付いてきた仙台の左SB藤村慶太を制すると、金澤慎、横谷繁とボールが渡って、広大なスペースへ加速していた江坂へとスルーパスが通った。
 
 ファーストタッチでスピードを殺さぬままペナルティエリアへと侵入し、折り返した。少しズレたが、D・ムルジャの足もとにボールは入り、勝負したところを大岩一貴に倒された。PK獲得。それを家長が冷静に流し込んだ。
 
 その後も多くの時間帯で大宮が主導権を握ったが、76分に仙台の三田啓貴のスーパーゴールによって同点に追い付かれてしまう。すると直後の77分には、家長の左肘が茂木駿佑の顔面を捉えたとして一発退場。それまでの試合内容が一変するような展開になってしまった。
 
 引き分けで良しとするのか、あくまでも勝利を目指すのか。ピッチ内では意識の差が生まれていたはず。それでも、ヒーローのひとりである江坂は「サポーターは最後まで諦めずに応援してくれているし、キクさん(菊地光将)にも『絶対にチャンスはある』と言われていた」と前だけを向いていた。
 
 数的不利となった1分後、もうひとりのヒーローとなる清水慎太郎がドラガン・ムルジャに代わってピッチに足を踏み入れた。そして、81分に劇的な勝ち越しシーンを作り出す、最後のピースとなるマテウスが投入される。役者は揃った。

次ページ「感覚が似ているから、任がほしいボールや場所は分かる」(清水)

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事