【仙台】主将とルーキーの物語。富田晋伍と小島雅也が築く理想的な上下関係

2016年08月20日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「失点に絡んだ悔しさをピッチで挽回してほしい」(渡邉監督)

リーグ戦初出場をスタメンで果たした小島。ただ、相手に圧倒されて「点数をつけるなら30点もいかない」と悔しさを滲ませた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1・第2ステージ8節]仙台 4-2 柏 8月13日/ユアスタ
 
 15分にCKからハモン・ロペスがゴール。その4分後にはウイルソンが追加点を叩き込んだ。開始20分で仙台が2-0とリード。試合前の予想と違う柏の4-1-4-1に苦しめられたものの、アンカーに入った大谷秀和に蓋をすることで、主導権を握りかけていた。
 
 しかし、29分に潮目が大きく変わる。柏の大谷が負傷により交代。秋野央樹が投入されると、布陣を4-4-2に変更された。これによって流れは徐々に柏に傾く。さらにその展開を助長したのが、露骨なまでの弱点狙いだった。
 
 仙台の左SBに入ったのは、今季、ユースからトップチームへと昇格した小島雅也。本職は右SBだ。リーグ戦初出場で初スタメンという重圧はもとより、馴れないポジションに適応しようと四苦八苦していた。柏にそこを狙い打たれた。
 
 クリスティアーノと伊東純也にボールを集められ、左CBの渡部博文やボランチの富田晋伍がフォローに回らざるを得なくなった。すると、そのカバーに他の選手が入らなければならず、各所でズレが起きた。32分、そうした隙を突かれてPKを与えてしまい、失点を喫する。ハーフタイムを挟んだ52分にも突破を許して、同点ゴールを被弾した。
 
「チームに迷惑を掛けてばかりだった。やりたいプレーを全然できず、点数をつけるなら30点もいかない。伊東選手の速さとクリスティアーノ選手の強さに圧倒されてしまった。相手のプレーを警戒し過ぎて、自分を出せなかった。緊張はありませんでしたが、ちょっとビビっちゃったのかもしれない。
 
 先輩たちからも何回か厳しい言葉を投げ掛けられました。ヒロさん(渡部)には『もっと強く寄せろ!』と怒鳴られましたし、(大岩)一貴さんにも『お前のサイドが狙われてるぞ。もっと強くいけよ!』と。確かに寄せが甘くて、相手をフリーと同じ状態にしてしまっているシーンも多かった」(小島)
 
 不完全燃焼のまま、小島は60分でピッチを後にしている。だが、"懲罰交代"かと言えばそれは違う。結果的に穴となってしまったものの、渡邉晋監督は試合後の会見で「失点に絡んだことが交代の原因ではない」と否定。同時に、できるだけ小島を引っ張った理由を明かした。
 
「もしかしたら(小島を)早めに交代しなかったことで、3失点目を喫したかもしれない。でも、まずは失点に絡んだ悔しさをピッチで挽回してほしいと思った。ただ、残念ながら本人が『足を攣った』と言ってきたので。
 
 代わりに左SBに入った(藤村)慶太が素晴らしい仕事をしてくれて、チームにとっては確かにプラスになりました。それでも、長い目で彼(小島)の成長を考えれば、『ああいう不甲斐ないプレーをしてしまった後にどう立て直せるのか』『メンタルをどう回復するのか』を見てみたかった。
 
 (交代の際に)難しい顔をして帰ってきたし、本人は今日の結果に対して、すごく悔しいでしょう。それを持って、次節以降に進んでほしい。今回のゲームでへこたれることなく、休み明けから元気に練習に顔を出してくれることを願っている」

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