コンテ、ラニエリ、アンチェロッティ etc.……国外で活躍するイタリア人監督の強みとは?

2016年08月17日 マウリツィオ・クロゼッティ

選手とは対照的に、イタリア人監督の重要は高まるばかりだ。

リーグ開幕戦でウェストハムを下し、チェルシーでの初戦を白星で飾ったコンテ監督。EURO2016でお馴染みとなった派手なパフォーマンスも健在で、サポーターからも愛される存在になりそうだ。 (C) Getty Images

 アントニオ・コンテの切れ味、クラウディオ・ラニエリの皮肉の効いたジョーク、フランチェスコ・グイドリンの真摯さ。それだけではない。ジョバンニ・デ・ビアージの堅実な積み重ね、ワルテル・マッザーリの執着心、そしてカルロ・アンチェロッティの風格――。
 
 これほど多くのイタリア人監督が国外で活躍するシーズンは過去に例がない。
 
 欧州で最も重要なリーグであるプレミアリーグだけで、なんと4人。昨シーズンのチャンピオンとなったレスターのラニエリ、途中就任でスウォンジーを残留に導いたグイドリンに加えて、コンテがチェルシー、マッザーリがワトフォードの新監督に就任した。
 
 1年の充電期間を経たアンチェロッティは、欧州最強を争うメガクラブ、バイエルンを率いてブンデスリーガという新たな舞台に臨む。彼にとっては、セリエA、プレミアリーグ、リーグ・アン、リーガ・エスパニョーラに続く5つ目のリーグだ。
 
 さらに、アルバニア代表を史上初のビッグトーナメント出場(EURO2016)に導き、本大会では初勝利をもたらしたデ・ビアージの功績も忘れるわけにはいかない。
 
 彼らのキャリア、野心、そして実績は、近年大きな困難に直面しているイタリア・サッカーに誇りと小さな光明をもたらしている。
 
 これは、ひとつのパラドックスだ。イタリアのクラブチームは国際的な栄光から久しく遠ざかっているし、タレントという意味でもイタリアはこのところ、ワールドクラスの選手を輩出できずに苦しんでいる。
 
 ところがそれとは対照的に、イタリア人監督への需要は高まるばかりだ。これは、サッカーの世界において「イタリア人監督」というカテゴリー、別の言い方をすれば「流派」が明確なかたちで確立されているという事実を示すものだ。
 
 実際、過去にも国際舞台で実績を残してきた指揮官は少なくない。ジョバンニ・トラパットーニは、ユベントス、インテル、バイエルン、レッドブル・ザルツブルク、ベンフィカという4か国5クラブでリーグ優勝を勝ち取った。
 
 ロベルト・マンチーニも、マンチェスター・シティでプレミアリーグを、ルチアーノ・スパレッティはゼニト・サンクトペレルグルクを率いてロシア・リーグをそれぞれ制している。ロベルト・ディ・マッテオはチェルシーで、チャンピオンズ・リーグ(CL)優勝監督になった。
 
 他にも、ネビオ・スカラ(ドルトムント)、アンドレア・マンドルリーニ(クルージュ=ルーマニア)、アルベルト・ザッケローニ(日本代表)がそれぞれのチームで、重要な実績を残している。

次ページモウリーニョやグアルディオラもイタリアでは学ぶ立場だった。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事